ストロベリー・ディスコ (ページ14)

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14.オーバーブッキングページ14

「あの、ノニさん、でしたっけ？」

「誰が健康ジュースだよ！？
ニ・ノ！」

「し、失礼しました！！
ニ・ノさん…は、何で櫻井さんのお宅でお世話になるんでしょうか？」

「逃げて来たの。」

「逃げて…？
あ！夜逃げですか？」

「失礼な！
ワタシこう見えて結構貯金あるのよ？
信じられるものはお金！
大好きなものはお金！」

拳をぐっとあげて吠える。
犬顔さんは守銭奴、と。
まあまあ答えになってないな。

「それで何から逃走中なんでしょうか？」

「女よ、女。
一緒に住んでた彼女と別れたのに家出てってくんないから逃げてきたの。」

「そうだったんですね。
それは大変でしたね。」

「翔ちゃんに相談したら新居でしばらく匿ってくれるって言うから来たのに…」

わかりやすくムスッとする。

なるほど。
予約してたホテルがオーバーブッキングみたいな。
そりゃあ私にトゲがあるのもしょうがない。
犬顔さんも大変そうなのに申し訳ないことしちゃったな。

「ニノ、悪いんだけどさ。
やっぱりこの子も今日から一緒に住んでもらうから。」

冷蔵庫からビールを取り出した櫻井さんがキッチンの向こう側から割り込む。

「はいはい。家主は翔ちゃんなんでね。
ワタシは櫻井家家訓に従うまで。」

え？
いいの？
こんな滅茶苦茶な話を了承してくれて。
今「チッ」って小さく舌打ちしたけど。

「お金が溜まり次第すぐに出ていきますので…。
少しの間お世話になります。」

深々と頭を下げる。

「へいへい。
で、家政婦さんのことは何て呼べばいいの？」

「あー…。
それ、俺もまだ聞いてなかった。」

「名前も知らないヤツ連れ込んだのかよ！？
やっぱり大丈夫？地雷女じゃないよね？
インスタ蝿とかさあ。」

犬顔さんは咄嗟にソファに散らかってたＴシャツで身を隠す。
なに？インスタバエって？じらい女って？
ニホンゴ・ムズカシイネ。

「あ、それは困るな。
インスタグラムとかやってる？」

「いえ、アナログ人間なんでそういうものにも疎いんです。」

「だ、そうです。」

「いやいや、まずさ、それを確認しておこうよ。
どうしたの翔ちゃんホント。
いつもならそんな易々と赤の他人に心を開くような陽キャじゃないでしょ？」

「はははっ、すごいディスりー。
陰キャのニノに言われたくないー。」

「ワタシは陰キャの引きこもりですから。」

地雷女だの、陽キャだの、陰キャだの、ディスりだの、
知らない言葉が2人の間で飛び交う。