干物女、恋愛するってよ。5 (ページ36)

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193.無償の愛ページ36

広い寝室にシーツが擦れる音と
たくさんのリップ音が響く。

合間に何度も「好きだよ。」って耳元で囁く。

目の前の社長は私にたくさんの愛を注いでくれてる。

それなのに、

私は…、

「…っ」

今、誰と会ってるの？
その笑顔も優しさもその人に見せてるの？

ねぇ、翔くん…。

なんて

他の男の人の事を考えてる。
最低な女。

「…泣いてんの？」

「…え？」

動きがピタリと止まり
不安そうな顔が覗き込んできた。

「…はぁぁ。
泣かせちゃった。」

「これは…っ、
違うよ、汗！
社長が激しすぎて汗かいた！」

「下手くそ。
演技するなら最後までもっと上手にしてよ。」

「演技じゃないよ！
私は社…和也くんが好きだよ！
一緒に過ごして本当に好きになったもん！」

「俺のことを好きになってくれたのは嬉しいけどさ。
でもお前はもっと好きなヤツ、いるでしょ？」

お見通しだ。

全部。

そこまで言わせてしまったら
もう汗とか誤魔化せないくらい涙が出てきた。

好きだよ、本当に。

好きになったんだよ。

私が窮地に立たされた時
いつも助けてくれて励ましてくれてたのは

二宮和也という人。

その不器用だけど真っ直ぐな優しさを。

本当に好きになってた。

でも、

私は、

それよりもっと前から
当たり前にそこにいた人が好きだったんだ。

ずっと、ずっと前から。

きっとサトチを好きになるよりも前から。

当たり前すぎて
気づけなかったんだ。

「……社長…、私…、」

「俺は妥協彼氏だから。
特に好きな人がいない時に付き合う都合のいい男に過ぎないの。」

「…。」

「ほら、好きな人がいるのならこんなとこで油を売ってる場合じゃないでしょ？」

小さく笑いながら

私の服を直して
身体を起こしてくれる。

行けって、
背中を押してくれてるんだよね…

「…私、謝りませんから。」

「うん。」

「本当に好きになってたから…
謝ったらそれを否定しちゃうから…」

「元はと言えば俺の大好きの押し売りだったもんな。
むしろ嫌いだった俺を好きになってくれてありがとう。」

「こちらこそ…ありがとうございました！」

ありがとう。
本当にありがとう社長。

涙を拭ってベッドから立ち上がると
ギュッと今までで1番強い力で抱きしめられた。

これが二宮和也という
私みたいな干物女を愛してくれた素敵な人との
最後のハグだった。