186.だった ページ29
1人頭の中で混乱していたら
ギュっと掴まれた腕に
より強い力が加わった。
「俺はお前に2つほど話しておきたい事があったのに。
なかなか帰ってこないから。」
ピクリ…。
話…って、なに？
急に胸がざわつき始めて
あの日の電話してる翔くんがフラッシュバックする。
そうか。
翔くんはずっと私に報告したかったんだ。
彼女が出来たこと。
あの部屋で同棲を始めること。
今ここでちゃんと報告したいんだ。
「俺、実は…」
聞きたくない。
聞きたくない。
聞きたくない。
お願い…、
貴方の口から言わないで。
認めないで。
「あの部屋…
「翔くん！あのねっ…！！！」
翔くんが口を開けた瞬間、
私は大声でそれを遮った。
「私、社長と付き合ってるから家に帰ってないの。」
「は？」
元より大きいその瞳が
ぐぐっと見開いて私を捕らえる。
一瞬、瞳が揺れたような気がしたけど
次の瞬間には大きな溜息が聞こえてきた。
「いつから？」
「…2週間前。」
「なんで言わなかったんだよ？」
「なんで翔くんに言わなきゃダメなの？」
「何それ？人が心配してんのに。
だいたいお前はあいつのこと好きなの？」
「だからなんで翔くんにそんな事言わなきゃいけないの！？」
何よ…っ！
自分だって彼女いるくせに！！
「私が誰と付き合おうが翔くんに関係ない！」
「女子力上げたいが為に好きでもない奴と付き合うなんて。
それがお前の大義名分か？」
「私は翔くんの彼女でも何でもないんだからっ！
もうお節介とかやめてよ！」
そこまで言ってハッとなる。
また、やっちゃった…。
「…は。お節介…ね。
そうだな、俺はお前の彼氏でも何でもない。
ただのお隣さんだったもんな。」
強い力で掴まれていた腕は
スッと力が抜けて
ストンと崩れ落ちた。
あ、終わった…。
だって聞き逃さなかったもん。
お隣さん"だった"って。
過去形を。
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2017年3月18日 14時
