178.好きだと言ってくれる日まで ページ21
貸してもらった部屋着は
もちろんあのからし色のヨレヨレＴシャツ。
うーん。
落ち着く。
社長もさっきまで着ていたカッチリ高級スーツから何ともダサい松岡修造の言葉が書かれたＴシャツに着替えてきた。
わー。
落ち着く。
「社長は会社だと決まってるのに
家だと何故こんなにダサいモサい？」
「いい服着るのが社長の仕事だからでしょ？
本当の俺はお前と同じ干物男だよ。」
干物…男。
あれ、仲間だな。
そう言ってタバコを加えてベランダに出るから
続いて私も外に出た。
そしたら、ビックリ！
驚愕の高さに足がすくむ！
「なにここ、成層圏くらい？」
「くふふ、もう少しで届くんじゃない？」
そして広い！
私の部屋より面積あるんじゃない？ってくらい。
こちらでもキョロキョロしてると
お隣さんとの境がしっかりしていてプライバシーが完璧に守られているのにふ、と思った。
そっか。
ここでビールを飲んでも
小言を言うお隣さんも、
ビールをくれるお隣さんも、
手すりを伝って来るお隣さんも、
いないんだ。
「…。」
「ねぇ。」
はっ！
いかんいかん。
仮にも今、私は社長の彼女さんなんだ。
彼氏さんの前で他の男のこと考えてるなんて！
「えへ、何でしょう？」
悟られないよう
へらっと笑って訊く。
「一層の事、ここに住む？」
「へ？」
「安心して。
まだ手を出すつもりはないから。」
「え？」
「Aが俺のことを好きだって言える日が来るまで。」
「社長…。」
「その代わり好きって言ってくれたら
リミッター解除で襲うから。」
「襲うんかーい！」
「だから1日…1分、1秒？
いやコンマ1秒でも早く好きになってね。」
くふって、笑って身体を引き寄せる。
その温かさに自分が曖昧な気持ちなことへ自己嫌悪。
「あとさ、"社長"って呼ぶのやめない？」
「じゃあ何て呼べば？」
「和也くんとか、カズくんとか？」
「カズぴょんとか？ニノナリとか？」
「ネーミングセンス酷すぎ。」
ふははって笑って流されたけど
徐々に名前で呼べたらな。って思った。
だって私は
彼女なんだし。
そう自分に言い訳をして
自ら社長の手を取り
頭を社長の肩に預けてみた。
「ふふ…、やっぱり振り幅すごすぎ。」
.
その夜、
私は仕事のことも翔くんのことも忘れて
本当に何もしない社長の腕の中で寝た。
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2017年3月18日 14時
