175.キス・ミー ページ18
「あーあー、泣きじゃくっちゃって。
ほら、お顔見せて？」
埋めていたその胸から顔を上げて見せる。
「プッ！
鼻水垂れ流しかよ。」
「ゔぅー、天使のヨダレだもん…ずずっ！！」
「その天使のヨダレってやつ、
スーツにめっちゃ付いてない？」
「ぎゃっ！ホントだ！
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい！
弁償とか出来ませんので！」
やばい！
これは絶対に高いスーツだ！
謝って謝って謝り倒せ！
「しょーがねぇなぁ。
弁償はいいから付き合おう、な？」
「なんっで、そうなるっ！？」
ぶぴっ！と出た天使のヨダレが
またスーツにかかった。
「だって今この腕の中にいるのがチャンスだろ。
弱ってるお前に付け込むし、卑怯でずるいけどさ。
さぁ、俺を妥協彼氏にするがいい！」
「だから、なんで私？
自慢じゃないけど私、
普通の女じゃないですよ？」
「それよ。
初対面でワタシにビンタ喰らわせたアナタだからよ。」
「あ、社長はドMとな？」
「どちらかと言うとSよ？
ベッドの中で証明してあげよっか？」
「いらんセクハラです。」
「ぷくく。
そういうトコ。
俺の肩書きを知ってても平気に牙をむくトコ。
男に媚びず一人で立ってる芯の強いAが好きだよ。」
あー…
弱ってる。
弱ってるな、私。
その言葉に心がグラリと動いた。
そんな風に思ってくれてるなんて。
「…干物女ですよ？」
「知ってる。」
「きっとイビキもかいてる。」
「ラピュタの子守唄よりはマシだな。」
「それに…
「はいストップ！
もう返事待てないんだけど。」
うるうるっと瞳を揺らしながら
唇を震わす社長。
その姿に社長の真剣度が窺える。
もう、いいんじゃないか？
少しばかり男性に甘えて生きても。
「分かりました…」
「マジで！？」
「不束者で二日酔いもよくしますが
よろしくお願いします。」
「夢じゃないよね？
現実ならチューしてよ？」
「いきなり？やだよ！」
「それなら俺から行くよ？」
「えええー、」
「ほら、早くー。」
口を尖らせて目を瞑る。
凄く嬉しそうに。
しゃーない！
キスなら何度もしてるし！
ええいっ！
チュッと軽く触れると
びっくりする社長。
「何それ、可愛すぎて吐きそう。
もう一回。」
「やだー！もう恥ずかし…んっ！」
「捕まえた。」
自ら口付けた唇は
結局、社長に奪われて。
捕らえられた舌がそれに応えたのは、
この瞬間から私が社長の彼女になったから？
それとも…
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2017年3月18日 14時
