干物女、恋愛するってよ。2 (ページ7)

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42.大忙しday ページ7

今日は3月末日。

本年度の決算日ということで
とにっかく忙しい。

棚卸しと呼ばれる在庫管理の業務に
事務所は大混乱。

あの江呂田部長がセクハラを忘れるほど。

そんな目の回るような忙しさの中、
慌ただしさなんてどこ吹く風な様子のサトチが事務所のドアを開けた。

「おーい、A。
今、忙しい？」

「見ての通りー。
ピーという発信音の後に
ご用件をどうぞ。ピー」

伝票片手にサトチの対応をする。
留守電チックにね。
ごめん。
とにかく、忙しいの。

「試作品って在庫扱いなんだ？
俺が貰ってきた失敗した試作品って、どうなる？」

「試作品の種類にもよるけど
自損品はカウントしないよ。
原材料として記録を残してるから。
そうじゃないとサトチにあげてたことバレる！」

「んははー、そっか。
なら、良かったー。」

それだけ訊いてホッとしたのか
笑いながら事務所を出ようとするサトチの後ろで

伝票にサインを書こうとした私は
ポケットからTなボールペンを取り出すと
ハッと思い出しサトチを呼び止める。

「あ！
サトチ、待って。」

「んー？」

机の中にある
この前渡せなかったコップとキノコの里を持ってきて
サトチの前に差し出した。

「へ？どうしたの、これ？」

「自転車タクシーのお礼デース。」

「…まじ？」

それらを手に取ったサトチは
驚いた顔からふわんとした笑顔に変わる。

口元からは八重歯が覗いて。
目尻は下げて笑うの。

「すげー嬉しい。
あんがと。」

照れてるのを隠すように人差し指で鼻を擦って言う。
そんな事を言われるとこちらも照れるわ。

照れ隠しに最近テレビで観た映画のバケモノ先生の真似して「ヌルフフフ」と笑って誤魔化した。

でも良かった。
サトチが喜んでくれて。

忙しくて余裕のなかった私の心が
少し癒された気がする。

今日もプラズマクラスターは通常運転。