46.契約サイン ページ11
「接待…に、商談？」
き、き、き、
聞いてない！
大切な仕事の取引相手となんて！
あ、大切なお客様と…って言ってたかも…
お食事会のワードに完全スルーしてたかも。
そうなのかも。
てかどう考えても無理でしょ！？
ベランダで発泡酒と茎わかめ片手に幸せ感じるような干物女の私が。
そんな上流階級な人間と楽しくお食事出来るわけないし。
行ったら最後
大切な商談を失敗させるに違いない！
「ちょ、そんな責任重大な役目なら無理です！
無かったことに…
「相葉氏ー？
聞いてたよね？」
私の言葉に被せて
社長が相葉さんに尋ねると
「あー、ごめんね、干物ちゃん。
今の会話ぜーんぶ録音しててさ。」
相葉さんはスマホの音声レコーダー機能を再生。
『じゃあ契約は成立ってことで？』
『はい！』
さっきの会話がしっかり録音されていた。
嘘でしょ！？
はめられた！？
「口約束ってね、
法律的にも有効なんですって。」
「やだっ！
無理っ！
帰るっ！
下ろしてっ！」
暴れる私を握りしめた手が
グイッと自分の身体の方へ引っ張り
身動き取れなくされる。
何この人！？
最初からそのつもりだったんだ。
そのつもりでこの手をこんな…
悪魔だ。
この人は天使の面の皮を被った悪魔だ！！
「詐欺師！
ペテン師！」
「あー、もう！
うっせぇーな！？」
「ッんん！？」
騒ぎ立てる私の口に
突然重ねられた唇。
驚いて目ん玉落としそうなくらい見開いてると
数センチ前にある社長の目が笑って
触れただけの唇が
どんどん深くなっていく。
久しぶりのキスに全身がビリビリして
ち、力が抜けるぅ…。
下唇を引っ張られながら離れた口が
口角をきゅうっと上げて笑う。
「…ふふ、
可愛い顔すんのね？
これで契約サインも終了。
はい、これでお前は今日から俺の恋人ね。」
「な！」
「黙らないと
またその唇塞ぐよ？」
「……ッぐぅ。！」
「ふはは！
可愛いやつめ！」
.
こうして…
悪魔な社長に騙され"恋人契約"を結んでしまった私の波乱な生活が幕を開けたのだった。
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2016年3月24日 22時
