トントン×鬱【人形】 ページ4
「鬱先生?いる?」
仕事から帰宅し、同棲している鬱先生に呼びかける。
中の電気は全て消えていて、人の気配がない。
居ないのかな。
リビングの電気をつけて、スーツから私服に着替える。後で風呂入らなあかんな。
…にしても、鬱先生どこに行ったんやろ。
いつもなら鬱先生と一緒にいるこのひと時も、たった一人の空間だと寂しいもので、ただぼっと、ついてもいないテレビを見るだけだった。
「ふあぁ…はぁ」
退屈で退屈で仕方がなさすぎて眠くなってしまったのか、大きめの欠伸を二回ぐらい繰り返して、ぐてーっと身体は倒さずに上半身は起こした状態でソファに身体を預けた。
もうこのまま寝てしまおうか、と目を薄らとさせていると、誰かの腕が背後から胸元に伸びてきて、そのまま抱き寄せられた。
ふわっと香る覚えのある匂い、視界の隅で見える綺麗な青の髪の毛。
誰かはすぐに分かった。
「…気配消してくんなや、鬱先生。びっくりしたやろ」
「……」
あー……なんかあったなコイツ。
鬱先生がこういきなり抱きついてくる時は、寂しいか構ってほしいかなんかあったかぐらい。
今の場合全部当てはまりそうな気がしてならないけど、とりあえずこいつを剥がさないといけない。
「一回離れようか鬱先生。身動き取れんやん」
「…や。まだこのままがええ」
抱きしめる腕の力がさらに強くなった。
まぁそうなるだろうとは思ったけどさ…
「はあぁ…分かった、こっち来て。いくらでも抱きしめてあげるから」
「…ん」
そう言えばすんなり俺の隣にかけよってきて、抱きしめてと言わんばかりに座る。
本当狡いな。
そんな鬱先生を優しく抱きしめて、軽く背中を撫でてあげる。
「ほれ、何があったん?言ってみ」
耳元で、変に鬱先生を刺激しないように、優しく抱きしめるのと同じように優しく問いかける。
こうすればだいたいは弱音を吐いてくれる。よそで暴れて帰ってくるか酷くなって帰ってくるよりかは断然こっちがいい。
「あんな、仕事んとこの俺の席に、上司おってん」
首元に顔を埋まらせながら、上ずった声で淡々と話し続ける鬱先生の身体は若干震えていて、もう少しで泣きそうだ。
「そんでな、どうしたんですか?って聞いたらな、上司の手に、トン氏とお揃いで買った人形があるねんな。それでな、こんなものなんで持ってきたって言うんよ」
続
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