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車に荷物を乗せている懐かしい後ろ姿。

身長はあの頃と変わってなくて、
たぶん俺より低いまま。


「やまだ!」


俺の声に振り向いた山田の表情は
驚きと、戸惑いと、気まずさが入り交じっている。


「伊野尾ちゃん…」


久しぶりに呼ばれた名前に
目頭が熱くなる。

声をかけたものの
あのっ、と一言発したまま次の言葉が出てこない。


「久しぶり、元気してた?」


そう笑う山田は、たった5年で
すごく大人びて見えた。

髪もオシャレになって。
ピアスもあいてて。
アクセサリーなんてつけちゃって。

俺の知らない山田がいる。


「伊野尾ちゃん?」

「、、、元気じゃなかった」

「え?」

「山田に、会いたかった…っ」


この5年誰にも言わなかった弱音。

自分から突き放したのに。
会いたくて、話したくて、謝りたくて。

滲む視界に、山田が近づいてくるのが分かる。


「それ本当?」


山田が優しく聞く問いに
うん、と頷くと


「俺も会いたかったっ…。」


そういって、山田は俺を抱き締める。
ふわっと香る山田の匂いに、
嬉しさと緊張が同時に押し寄せてくる。


「ちょっと、山田…っ」

「俺、伊野尾ちゃんがもう俺に会いたくないのかも知れないって思ってた。嫌な思い出になってるかもしれないって。だから、今めちゃくちゃ嬉しい」

「嫌な思い出じゃないよ…」

「俺、また頑張って良い?伊野尾ちゃんに好きになってもらえるように」


相変わらず真っ直ぐで


「なにを頑張るの?もう教師と生徒じゃないんだよ?」

「それは分かってるよ!だから好きになってもらえるように…」


相変わらずすこし馬鹿。


「もう好きだから、頑張らなくて良いよ」

「え?」

「好きだよ、山田。この5年間ずっと好きだった」

「本当?」

「本当」


ぎゅーっと力強く抱き締めてくる山田に
ギブアップの意味をこめて、タップする。


「痛い、ちょっと、山田、痛い、苦しい」

「無理。もうちょっと我慢して。嬉しすぎてやばいんだって」

「ふへへ、良かったね、山田」

「うん、良かった、幸せ、まじで幸せ!」

「じゃあそろそろ離して」

「あともうちょっと〜」


あまりにも山田の力が強すぎて
うーって変な声がでちゃうくらい苦しいけど、
俺も幸せだから、今日だけ特別に許しちゃう。


「伊野尾ちゃん」

「うん?」

「俺と付き合って」


耳元から聞こえる甘さを含んだ声に


「仕方ないなぁ」


と、笑って可愛くない返事をした。




End

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雨のち雨(プロフ) - こここここさん» 嬉しいコメントありがとうございます(*^^*)!短編1話だけですが、あげさせていただきました! (4月7日 12時) (レス) id: f308a3c4d4 (このIDを非表示/違反報告)
こここここ(プロフ) - こんにちは。このお話大好きです。幸せになってからの二人のその後も読んでみたいです。 (4月7日 7時) (レス) @page14 id: 60de11d6bd (このIDを非表示/違反報告)
雨のち雨(プロフ) - inunekoさん» コメントありがとうございます!そう思っていただけたなら嬉しいです(*^^*)最後までお付き合いくださりありがとうございました! (3月29日 7時) (レス) id: f308a3c4d4 (このIDを非表示/違反報告)
inuneko(プロフ) - 終わり方素敵すぎます…!2人とも可愛すぎる〜 (3月29日 0時) (レス) @page14 id: 9eb63571d6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雨のち雨 | 作成日時:2024年3月3日 23時

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