バイト先の好きな人(ymin) (ページ19)

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やっと会えたね伊野尾さんページ19

有岡さんは伊野尾さんのいる場所を知っているようで、迷うことなく歩いていく。

「いのちゃん、山田くんが大切だから色々悩んだんだよ。怒らないであげてね」

有岡さんは立ち止まると、さぁどうぞ、と目の前にある扉を開けた。

扉の先は音楽室のような場所で、ピアノが１つある。

そこから音を奏でている後ろ姿はたしかに俺が会いたかった人で、、、

「伊野尾さん…」

俺の声に気づいて振り返った伊野尾さんは
相変わらず可愛かった。

「なんで…」

「伊野尾さんが逃げちゃったから、追いかけにきました。言い逃げなんてずるいです。俺の話も聞かないで…」

やっと会えた伊野尾さんはすごく苦しそうな表情を見せた。

「聞かなくても分かります…」

「分かってない、俺がどれだけ伊野尾さんに会いたかったか」

「へ…？」

「そもそも好きになったの俺が先ですからね！」

「や、やまださん？」

「俺、人生で初めて一目惚れしたんですから！」

「うそ…」

伊野尾さんは俺に目を向けたまま、ポロポロと涙を溢す。

こんなときに、泣いてる姿も可愛いなぁなんて思う俺は、ちょっとおかしいのかな。

「ずっと好きでした。ううん、今も好き。大好きです。」

伊野尾さんから流れる涙を優しく拭う。

「でも、俺、男だよっ…」

呼吸を見出しながら言う伊野尾さんをそっと抱き寄せる。

「それは俺もですよ。それでも好きなんです。」

「、、、っ…俺も、俺も好きです…」

俺の背中に回る伊野尾さんの手がとても嬉しくて、愛しくて、伊野尾さんをさらに強く抱き締めた。