短編ymin (ページ35)

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「けい！！はやく！！」

って、山田は一生懸命手招きしてるけど、いのちゃんはロボットみたいな動きして立ち上がって戸惑ってる。

俺たちの顔みて、ものすごく嫌そうな顔でゆっくりこっちに近づいてきた。

いのちゃんへの同情半分、２人の絡みが見れる楽しみ半分。

ごめんいのちゃん。やっぱ楽しみ100％だわ。

「なに、山田…ちょっと飲みすぎじゃない？」

「え？そんなに飲んでないよ。てか、なんで山田って呼んでんの？もう仕事終わったじゃん、涼介がいい」

「いや、ほら、メンバーの前だしさ…」

ぶすくれる山田に、それをなだめるいのちゃん。

「何か聞いた？」

と、ゆっくり俺たちを見る。

「なにも！」
「いのちゃんの髪が綺麗とか」
「肌がすべすべふわふわとか」

「そこそこ聞いてんじゃん！」

「たいしたこと聞いてないよねー」
「ねー」
「愛されてんだなーって」

「ほら、山田。帰るよ」

山田の腕を掴んで立ち上がらせようとした、いのちゃんの腕を山田が振り払う。

「やだ！俺もう少し話して帰る！けいの話すんの！」

「しなくていいから！」

酔ってるからか、恥ずかしいからか、いのちゃんの顔は少し赤い。

「いいじゃん、俺たち聞きた～い」

いつのまにか、いのちゃんと話してた髙木も参戦してた。

「まずねー、けいの可愛いところはー」

「山田！もういいから！」

絶対に帰らないという山田の姿勢に、いのちゃんは、はぁ、とひとつため息を吐くと、山田の耳元に顔を近づけ何かを囁いた。

そして、ゆっくりと弧を描き、妖艶に微笑んだんだ。

傍観者の俺らも思わず静かになる。

「帰る！」

「「「「え？」」」」

勢い良く山田は立ち上がると荷物をさっと握って、いのちゃんの手を掴みそのまま帰っていった。

「なに言ったの？」
「さぁ？聞こえなかった…」
「てか、今のいのちゃんの顔はアウトでしょ」

ほんとに、、、メンバーの前であんな顔するんじゃないよ。

「あーでも俺も初めから聞きたかったなぁ、山田の話」

うなだれる髙木に

「僕、初めから動画とってる。後で送ったげる」

と、どや顔で携帯を見せつける知念。

さすが知念、ぬかりなし。

その後、知念が動画を送った先はまさかのグループライン。

次の日、飲み会で既に寝ていた薮ひかはすごい騒ぎようだった。

結局いくら聞いても、いのちゃんが囁いた言葉は謎のまま…

ただ、いのちゃんは俺らが思ってる以上に大事にされて、愛されているみたいだ。