短編ymin (ページ23)

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「もしもし！だいちゃん？！伊野尾ちゃんそっちに、」

「来てるよ」

よかった、大ちゃんちにいたんだ。
はやく迎えに

「でも、迎えは明日にしてほしいな。もう、伊野ちゃん寝ちゃったし、時間も遅いしさ」

寝ちゃったんだ。たしかに、時間はもう遅いけど…

「泣いてたよ」

え？

「泣いてたって…なん、で。」

「んー、俺から言うことじゃないと思うから、明日直接聞きなよ。なんで出てったかも話さなきゃだろ？」

そっか。やっぱり、出てったんだよな。

分かってたはずなのに、大ちゃんから
改めて言われると目をそらしたかった現実を
突きつけられて苦しくなる。

嫌われたんだろうか。

そもそも、伊野尾ちゃんより
早く帰ってきてたくせに
出ていったことにさえ気づかないなんて…

ここ最近はお互い忙しくて、
一緒に住んでいても、ろくに会話もできていない。

それなのに、久しぶりに早く帰ってきても
ゲーム部屋に閉じこもって出てこない彼氏。

……そりゃ出てくわ。
なにやってんだろ俺。

大事にされてないって思われたのかもしれない。
別れたいって思われてたらどうしよう。

「山田」

そうだ、まだ電話を繋げたままだった。

「明日、ちゃんと迎えきてあげてね。」

大ちゃんの声があまりにも優しくて
泣きたくなった。

「うん。伊野尾ちゃんのことよろしくお願いします」

じゃあ、おやすみ、と大ちゃんは電話を切った。