隣の部屋のさとみくん。【すとぷり】

3日目。 ページ4

「…あの、大丈夫ですか？？」


視界が綺麗な桃色で埋まる。


吸い込まれそうなくらい澄みきった瞳が、アホ面を浮かべた私を映す。


あぁ、このまま吸い込まれちゃいたい。



「いへぇっ！？ あ、だ、大丈夫です！」




いきなりさとみさんに顔を覗き込まれて、我に返ると声が裏返った。うぅ、死ぬほど恥ずかしい…



「っふ、ふふっ、」




耐えられきれない、とでも言いたげな表情でくすくすと笑うさとみさん。


羞恥心が体を駆け巡る、顔が焼けるように熱い。



顔から火が出そうなくらいの高い高い
熱。



心臓の動きがいつもより早く感じる。



気の所為なんかじゃ、ない。


「ぅ、ぁあ、あ、の…」



「あぁ、ごめんごめん、余りにも花崎さんが可愛くて、」



_笑いが止まらなかったよ。



「 え 」



「…ん？」



「い、いま、なんて…」



「え？花崎さんがかわ 「ぁあああああ！！！！言わなくていいです！！！」



「…なんなんですか」


「…るぅと？」


「え？」


「あ、いや なんでもない。」



「「……」」


静寂が辺りを包む。



静かになると急に我に返って、自分の行動に恥ずかしさを覚える。 慌てた私は羞恥心から背を向けた。



「あ、の、失礼します！！」



ぺこりと頭を下げ、彼が菓子折りを受け取ったのを確認して、踵を返した。





そういえば、さとみさんさっき私のこと見て、
るぅとって…



るぅと、るーと、…、√？？



さとみさんって理系なのかな？？



バリバリ文系の私には数学は未知の領域だ。




「…さとみさん、か」



"花崎さん"


男性に名前を呼ばれること自体が久しぶりで僅かに頬が紅潮する。



なんだか、不思議な人だな…



少なくとも素敵な人には、変わらない。

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