( 問9 ) ページ6
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次の日も、その次の日も、朝、誰もいない教室で、角名くんと私は二人になった。
あの日は本当にたまたまだったみたいで、最近は私の方が来るのが早いけれど、少しの時間だけ、二人で勉強をする。
……といっても角名くんは相変わらず私に聞かれたところだけを復習している形だったけれど。
そうやって角名くんのバレー部、部活停止の一週間と、すこし。
毎日少しずつ話して、たくさんの優しさに触れて、話す前よりもずっと、ずっと、角名くんに対する気持ちが大きくなっていた。
それでも笑顔が見れたのはあの一回きりで、見れる回数の少なさと、私を恋に落としたきっかけやらで頭に焼き付いたまま、簡単に剥がれ落ちてなんてくれない。
今までのテストの中で、一番勉強してきた。
不安は小さく残っているけれど、今日は、角名くんが私に重点的に教えてくれた教科のテスト。
テスト期間一日目、角名くんが私に教えてくれた教科でもあって、個人的に、だけど、なんだかとても点数がとれそうだった。期待が、持てる。
問題も、解答用紙も渡って、少しのざわざわとした時間が流れる。
「……じゃあ、始めてください」
ギリギリまで時計を見ていた先生の口が動いた瞬間、一斉に紙を捲る音が聞こえて、私も一緒になってページをめくった。
始まる前に確かにあった不安は、もうどこかにいなくなっていて、
問題がいつもよりもすらすらと解けるのを感じていた。
白かった解答用紙が自分の字でだんだんと埋まっていく中、ある問題のところで、手が、止まる。
………この、問題。
『 シャーペン貸して、 』
『 こうすれば解けるんじゃない? 』
___角名くんが教えてくれたやつ…!!
こんな、「勉強したところが出た」なんて喜び、小学生でもあまりしないだろうに、私はなんだかとても嬉しい気持ちでいっぱいで。
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角名くんがいなかったら、空欄ができていたかもしれない解答用紙を、もう一度確認する。
……うん、ばっちり。
テスト中にも関わらず、私はきっと、嬉しい気持ちが顔に出ていたと思う。
テストが返ってきて、ここの問題に丸がついていたら、絶対に一番にお礼を言うんだ、と私は決めた。
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ル(プロフ) - 投稿された当時からずっと大好きで、ふと思い出しては読みに来てます!!最高です!!残してくださってありがとうございます(> <)!! (7月9日 12時) (レス) id: 6f4d1e3f85 (このIDを非表示/違反報告)
花江(プロフ) - チャイさん» 誤字あったので再度失礼します、既に目を通されていましたらすみません…;;チャイさん〜!!新年からとっても素敵な感想ありがとうございます;;初投稿ですごく拙い文章ですが最後まで読んでいただけて嬉しい限りです;;こちらこそありがとうございました…!!;; (2019年1月10日 0時) (レス) id: cf4a10af8b (このIDを非表示/違反報告)
チャイ(プロフ) - 泣きました、ほんとに泣きました。まず文体がぽわぽわしていて、角名くんと女の子の青くて淡い恋心がとても伝わってきました。それから侑くんが男子高校生って感じですごく好きです。思わずラストは大の字になって倒れました。素敵なお話をありがとうございました! (2019年1月4日 18時) (レス) id: 26170b8b11 (このIDを非表示/違反報告)
花江(プロフ) - ゆうさん» 読んでいただいてありがとうございます…!コメントもとても嬉しいです;;そういっていただけてよかったです、ありがとうございます…! (2018年8月1日 15時) (レス) id: cf4a10af8b (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 両片思いが実るまでが素敵でした…!可愛いお話ですごく好きです! (2018年7月17日 19時) (レス) id: 3710aecabb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花江 | 作成日時:2018年4月14日 19時