おもい ページ40
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腫れた目もすっかりよくなった月曜日。重すぎる足をなんとか引きずって学校へ向かう。
正直、角名くんも治くんも顔があわせづらくてなんとも言えない。
角名くんに至っては理由なんて何も知らないのに、突然私が泣き出したものだから、多分この気持ちはお互い様。
席まで隣だからどうしようもないし…
それでも、ここで私だけが事を投げ出すのは、よくないと思った。
逃げるわけには、いかないから。
いつもよりもずっと時間を遅めて、学校に着くときには、もう遅刻ギリギリ。
やっぱり気まずさが勝ってしまって、朝から泣くなんてことはしたくなくてこうなってしまった。これが逃げてるって言うのに。
まず、謝ろう、
治くんに。
赤く染まる信号を見ながら考える。
何から言うべきだろう、ごめんなさい、と伝えて、それから。
青色に変わった信号、反射的に飛び出したはいいけれど、これの横断歩道を渡ってしまえば、もう学校だ。
答えなんてひとつも出てないのに。
「………もう、逃げない」
ぺちん、と気合い入れのつもりで頬を叩く。
…渋っていたって仕方ない!
…言いたいことは山ほどある。
整理しろって言われても、きっと今日中じゃあ無理。
いっこずつ、確実に伝える。それだけが、私にできること。
進むスピードを速めて、校舎の中に入って、ばたばたと靴を履き替えた。
同じようなひとが他にもぱらぱらいて、考えてることはまるで違うんだろうなあ、とくだらないことを、思う。
とんとん、と階段をかけ上がって見えるのは2-1と掲げられた教室。
ほんのすこし。
心が揺れた。
金曜日、なんにも考えずに走った廊下が、ぐにゃりと歪みそうになって、立ち止まる。
ここまで来て、また、逃げようとしている自分に腹が立った。
考えていても仕方ないのに。
行かないと、いけないのに。
足が動こうとしない間、暫くその場にいると、予鈴が鳴った。
「……予鈴、鳴ってまうで」
柔らかい声が頭のなかでくるりと回って、背中を押されるように、扉を開ける。
考えていることはたったひとつ。
不安でもなんでもない。
伝えたい、いまのきもち。
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ル(プロフ) - 投稿された当時からずっと大好きで、ふと思い出しては読みに来てます!!最高です!!残してくださってありがとうございます(> <)!! (7月9日 12時) (レス) id: 6f4d1e3f85 (このIDを非表示/違反報告)
花江(プロフ) - チャイさん» 誤字あったので再度失礼します、既に目を通されていましたらすみません…;;チャイさん〜!!新年からとっても素敵な感想ありがとうございます;;初投稿ですごく拙い文章ですが最後まで読んでいただけて嬉しい限りです;;こちらこそありがとうございました…!!;; (2019年1月10日 0時) (レス) id: cf4a10af8b (このIDを非表示/違反報告)
チャイ(プロフ) - 泣きました、ほんとに泣きました。まず文体がぽわぽわしていて、角名くんと女の子の青くて淡い恋心がとても伝わってきました。それから侑くんが男子高校生って感じですごく好きです。思わずラストは大の字になって倒れました。素敵なお話をありがとうございました! (2019年1月4日 18時) (レス) id: 26170b8b11 (このIDを非表示/違反報告)
花江(プロフ) - ゆうさん» 読んでいただいてありがとうございます…!コメントもとても嬉しいです;;そういっていただけてよかったです、ありがとうございます…! (2018年8月1日 15時) (レス) id: cf4a10af8b (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 両片思いが実るまでが素敵でした…!可愛いお話ですごく好きです! (2018年7月17日 19時) (レス) id: 3710aecabb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花江 | 作成日時:2018年4月14日 19時