白いノート ページ4
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わかる自信ねえよ、と控えめな保険をかけられたあと、
二人で考えたらわかるかも!と提案すると、渋々、といった様子でこちらに椅子を引っ張ってくれた。
スポーツ推薦でわざわざここまできた、というのを前にどこかで聞いたのを思い出した。
授業を思い返してみると、記憶では、勉強もできたはず、すごいなあ。
ふわりと香った優しい柔軟剤の匂いに顔をあげると、さっきまで少しだけ離れたところにあった顔が、すぐ近くにあって。
切れ長の目を見ていると、「ん?」なんて言われる。
うるさい心臓を誤魔化すみたいに、「な、なんでもない」と返すと、「…そ、」のひとこと。
ああ、やばい、胸がいたい。
やっぱり、一人用の机を二人で使うのは、少しというかだいぶ窮屈で、肩なんて重なっていた。
暫くの間、ふたりで問題とにらめっこをする。……といっても、私はずっとそわそわで、問題とにらめっこをしていたのは主に角名くんだ。
そうして、長いようで短い沈黙を破ったのも、角名くんだった。
「……ああ、これは、」
零れた声のあと、きょろきょろと周りを見渡して、「シャーペンかして、」と視界に大きな手が入って、くる。
細い指。ごつごつと骨ばった、バレーをしている人の、爪まで綺麗にされた手。
「は、はい」
「ん、ありがと」
そんな角名くんの手は、私のノートの白い部分に文字をすらすらと書き上げていった。
…当たり前、だけど。
私の手とは全然違う大きな手。
男の子、なんだなあなんて改めて感じて、近い距離に、ふんわり漂う甘ったるい雰囲気が、私の心拍数を確実に、増やしていた。
「……これで解けるんじゃない?」
「…っあぁ!」
突然あがった声にびっくりして、変な声が出る。それに角名くんもびっくりしたみたいで、少しの間のあと、ん、とシャーペンを渡された。やばい、まって、
これ、あれだ、
わたし……
こんな感情が私の中に生まれるのは、
いつぶりかなんてわからない。
前に“恋”したのはいつ?なんて聞かれても思い出せないくらい、昔のことだったのかもしれない。
角名くんが握っていたシャーペンをきゅ、っと握ってみる。
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ル(プロフ) - 投稿された当時からずっと大好きで、ふと思い出しては読みに来てます!!最高です!!残してくださってありがとうございます(> <)!! (7月9日 12時) (レス) id: 6f4d1e3f85 (このIDを非表示/違反報告)
花江(プロフ) - チャイさん» 誤字あったので再度失礼します、既に目を通されていましたらすみません…;;チャイさん〜!!新年からとっても素敵な感想ありがとうございます;;初投稿ですごく拙い文章ですが最後まで読んでいただけて嬉しい限りです;;こちらこそありがとうございました…!!;; (2019年1月10日 0時) (レス) id: cf4a10af8b (このIDを非表示/違反報告)
チャイ(プロフ) - 泣きました、ほんとに泣きました。まず文体がぽわぽわしていて、角名くんと女の子の青くて淡い恋心がとても伝わってきました。それから侑くんが男子高校生って感じですごく好きです。思わずラストは大の字になって倒れました。素敵なお話をありがとうございました! (2019年1月4日 18時) (レス) id: 26170b8b11 (このIDを非表示/違反報告)
花江(プロフ) - ゆうさん» 読んでいただいてありがとうございます…!コメントもとても嬉しいです;;そういっていただけてよかったです、ありがとうございます…! (2018年8月1日 15時) (レス) id: cf4a10af8b (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 両片思いが実るまでが素敵でした…!可愛いお話ですごく好きです! (2018年7月17日 19時) (レス) id: 3710aecabb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花江 | 作成日時:2018年4月14日 19時