理解 ページ30
▽
昨日から、ずっと。
同じ苛立ちを、背中に連れている。
結局、着替えたあのあとも気持ちを逃がすことなんてできずに、鍵番だった侑と、それについていった治とはすぐに別れた。
ああ、マジで、こんなにうまくいかないモンなんだって、思い知らされた感じ。
珍しく長い間風呂に浸かっていたせいか頭はボヤボヤして、ふやけてしまったナニかからは、暖かい涙が止まらなかった。
なんで、泣いてるんだ。
＿＿悔しい、からか。
それとも、自分が惨めだからか、
ただ単に、悲しいからか。
心の中の黒い渦は勢いを増して、外の音なんてどうにも聞けなかった。
考えることも思い通りにならなくて、もどかしい。わからない。いろいろと、ぜんぶが。
その日はそのまま、泥のように、眠った。
･
大丈夫か？体調悪いんか？
口を合わせたような心配も、今日は体育館の点検のおかげで聞くこともない。
つまりは、部活が休みな訳で、俺にとって都合がよかった。
このぐっちゃぐちゃの頭じゃ部活なんてロクにできないし、北さんになんて言われるかわからない。
冷たいあの人のことだ、すぐに帰れとか言い出す。機械みたいなセンパイにはわかんないですよーっ、だ。
………でも、なにかをしていないと、黒い部分が溢れだしそうで、それはやっぱり、俺にはどうにもうまくできなかった。
授業中に、要らないことを考えないようにした。
昨日の晩御飯は味がしなかったかな。
なんでだっけ、気持ちが他のとこにあったからだ、何処？？それは、どこ？
気がつけば、瀬名で頭がいっぱいで、
ああ、クソ、なんだこれ、クソださいじゃん、俺。
腕に頭を埋める。
以前なら聞こえてきたはずの、「角名くん、眠いの？」なんていう柔らかい声は、はたりと消えてなくなった。
俺も、隣の彼女に話しかけることは、なくなった。おたがい、さま。
今日、何回目かのチャイムを聞くと、教室の中が騒がしくなる。……あれ、もう昼か。
全く嵐は収まらないし、心の穴は塞がらない。なんなんだ、ほんとに。
深く息を吐いて、今日のおかずはなんだろう、結局いつも一緒だけど、なんて下らないことを考えながら机の横の鞄に手をかける。
…すると、隣の席から彼女が立ち上がる音ががたん、と確かに耳に届いて、反射的に、目で、追ってしまった。
瀬名の行く先。
わかっていたはずなのに、覚悟とかそういうのじゃ、なくて、普通に理解していたはずなのに、
人の心は、諦めっていうのを、知らないみたいだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 74人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ﾙ(プロフ) - 投稿された当時からずっと大好きで、ふと思い出しては読みに来てます!!最高です!!残してくださってありがとうございます(> <)!! (7月9日 12時) (
レス) id: 6f4d1e3f85 (このIDを非表示/違反報告)
花江(プロフ) - チャイさん» 誤字あったので再度失礼します、既に目を通されていましたらすみません…；；チャイさん〜!!新年からとっても素敵な感想ありがとうございます；；初投稿ですごく拙い文章ですが最後まで読んでいただけて嬉しい限りです；；こちらこそありがとうございました…!!；； (2019年1月10日 0時) (レス) id: cf4a10af8b (このIDを非表示/違反報告)
チャイ(プロフ) - 泣きました、ほんとに泣きました。まず文体がぽわぽわしていて、角名くんと女の子の青くて淡い恋心がとても伝わってきました。それから侑くんが男子高校生って感じですごく好きです。思わずラストは大の字になって倒れました。素敵なお話をありがとうございました！ (2019年1月4日 18時) (レス) id: 26170b8b11 (このIDを非表示/違反報告)
花江(プロフ) - ゆうさん» 読んでいただいてありがとうございます…！コメントもとても嬉しいです；；そういっていただけてよかったです、ありがとうございます…！ (2018年8月1日 15時) (レス) id: cf4a10af8b (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 両片思いが実るまでが素敵でした…！可愛いお話ですごく好きです！ (2018年7月17日 19時) (レス) id: 3710aecabb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花江 | 作成日時：2018年4月14日 19時
