トマト ページ20
▽
「…瀬名さ、バレー部見に来たことあったん？」
バレーを頑張ってるところが好き、と言った瀬名。稲荷崎はツムがどうたらこうたらでギャラリーが多い。
放課後なんて、女子も多いから、見に来たことあんのか、って気になった。
「ああ、」と思い出したように声をあげて、「ないない…！！見たことなんて、ないよ！」なんて、その小さな顔の前で手を二、三回、柔らかくふって笑う。
「いつか見たいなって思ってるん、だけどね」
「……来ればええやんか」
「…んー、あの、うまく言えないんだけど」
結論から言って、瀬名は小さなことでよく悩む女の子だった。
こちらが何かを言えば、でも角名くんが。
こちらが何かを提案すれば、いや、角名くんは。
なんや、随分じれったいやんか。
「……迷惑だけは、かけたくないし、練習集中できた方が角名くんにとっても、
…っあ！もちろん、宮くんにとっても、いいかなって思うから、」
できるだけ、見に行くことはしたくない。瀬名はそういった。
「…朝練が終わって教室に入ってきて、ぐったりしてるのを見るだけでも、ああ、頑張ったんだなってわかる、から。
見に行かなくても、見に行けなくても、私は、」
いいんだ、悔しそうに笑った瀬名の顔を、なんだかとてもじゃないけど見てられなくて、目を、そらした。
そして同時に、何かに、角名に、夢中になっているこの子のことを、もっと、見たいなんて、柄にもないことを思う。
「……予鈴なってまうで」
「っえ！？もうそんな時間！？
ご、ごめん、宮くん！先戻ってていいから」
そういってまだ残っているおかずをわたわたと口に運んだ。
……喋りすぎとったもんなあ。
ほっぺたを控えめにふくらませて、必死に噛み砕く姿を見て、気づいた。
…嫌いなんかな
いっこうに手がつけられないトマトを見た。
「瀬名、これもらうで」
「…っえ、え、あ、いいの？」
「そこはドーゾって言うべきやで」
…どうぞどうぞ、宮くん。ありがとう。
柔らかい笑顔を背中に受け取って、すぐに追いかけてくるであろう瀬名の前を歩いた。
ついでに、うるさい心臓も連れて。
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ﾙ(プロフ) - 投稿された当時からずっと大好きで、ふと思い出しては読みに来てます!!最高です!!残してくださってありがとうございます(> <)!! (7月9日 12時) (
レス) id: 6f4d1e3f85 (このIDを非表示/違反報告)
花江(プロフ) - チャイさん» 誤字あったので再度失礼します、既に目を通されていましたらすみません…；；チャイさん〜!!新年からとっても素敵な感想ありがとうございます；；初投稿ですごく拙い文章ですが最後まで読んでいただけて嬉しい限りです；；こちらこそありがとうございました…!!；； (2019年1月10日 0時) (レス) id: cf4a10af8b (このIDを非表示/違反報告)
チャイ(プロフ) - 泣きました、ほんとに泣きました。まず文体がぽわぽわしていて、角名くんと女の子の青くて淡い恋心がとても伝わってきました。それから侑くんが男子高校生って感じですごく好きです。思わずラストは大の字になって倒れました。素敵なお話をありがとうございました！ (2019年1月4日 18時) (レス) id: 26170b8b11 (このIDを非表示/違反報告)
花江(プロフ) - ゆうさん» 読んでいただいてありがとうございます…！コメントもとても嬉しいです；；そういっていただけてよかったです、ありがとうございます…！ (2018年8月1日 15時) (レス) id: cf4a10af8b (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 両片思いが実るまでが素敵でした…！可愛いお話ですごく好きです！ (2018年7月17日 19時) (レス) id: 3710aecabb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花江 | 作成日時：2018年4月14日 19時
