2 ページ20
・
とうとうこの日がやって来てしまった。
ラウールが家を出る日、私のもとから巣立つ日が。
「いい？しっかり勉強して、仕事も頑張ってね。それから毎日ちゃんとご飯食べて、」
「母さん、その辺は多分俺母さんよりしっかりしてるから大丈夫」
うっ、痛いとこをつくわね。
やたら頭が良く育ってしまったせいか、お口まで達者なのよね。
「と、とにかくあなたは学生なんだから、本業は学生ってことを忘れないこと！」
「はいはい。それじゃあ行くね」
やけにあっさりと出て行く息子の背中を見送る。
この家から電車で二つ先の駅周辺、大学近くに住むんだけど、そんなに急いで出て行かなくても良かったのになって。
今では見上げるのも疲れてしまうくらい大きくなってしまったラウールは、私よりもずっとずっと考え方が大人で早く自立しようとしているのかも。
そして早く産んだけど、実際母親になれたのはラウールが物心ついた頃だった私にとっては、離れていくのがとても寂しく感じた。
「情けないな」
.
「おつかれさまー」
「いらっしゃい。蓮、仕事お疲れさま」
今日私は有給を消化していたから、夜になって仕事を終えた蓮が家にやってきた。
蓮と付き合って三年と少し、相変わらずこのイケメンくんは優しくて甘い。
「寂しかった？」
靴を脱ぐよりも先に、玄関で出迎えた私を腕の中に抱き入れてくれる。
ぽんぽんと後頭部を優しく数回撫でられて、ああ気持ちバレバレだなって。
「……なんであの子出て行っちゃったのかな。あの子が居なくなった家の中広いくてやだわ」
「男だからね。色々考えてんだよ、あいつも」
男だろうがなんだろうが、私にとってはいつまでも可愛い子供なのにな。
しばらく私を宥めてから家の中へ入って、私が支度していた晩御飯を一緒に食べる。
「ん。美味い」
「今日ねお魚安かったの。得だなーって思って買ったのが三匹」
「ふはっ、ラウールの分ね。いいよそれ俺食うから」
「ん、ありがとう」
はあ、駄目だな。
もとからダメダメで頼りない母親だったけど、ラウールが居るからしっかりやろうと頑張ってたのに、そのラウールが居なくなってしまうと力が抜けてしまったような感じだ。
「帰ってきたら飯があるって最高だよな」
「………ん？ うん、だね」
焼いただけの魚を真っ直ぐ見下ろし綺麗に食べてる蓮。
もぐもぐって、珍しくこっちをあまり見ない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1585人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ(プロフ) - acoさん» aco様、コメントありがとうございます！ただ風呂場でイチャつかせたかったから出来たお話です（笑）キュンキュンしてもらえて良かったです(^^)手馴れてる黄色さんに愛されましょう（笑） (2021年5月1日 17時) (
レス) id: 07fd991e4a (このIDを非表示/違反報告)
aco(プロフ) - ゆきんこさん！照かっこよすぎます！！キュンキュンしました！照となんてお風呂入れない！そして、分かっているけどちょっと慣れてるの嫌だ（笑）とても楽しかったです！これからも楽しみにしています！ (2021年5月1日 14時) (レス) id: 5529cc6a26 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ふさん» ふ様、コメントありがとうございます(^^) 青色さんのお話もそうですが、番外編は書きたいものがあれば、また誰かのお話を追加させてもらいますね☆ (2021年4月19日 16時) (レス) id: e0fcc6876b (このIDを非表示/違反報告)
ふ - 翔太くんは特別編にありましたね;;ごめんなさい。 (2021年4月19日 8時) (レス) id: 3ae47a3069 (このIDを非表示/違反報告)
ふ - 翔太くんのも楽しみにしてます！ (2021年4月19日 7時) (レス) id: 3ae47a3069 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきんこ
| 作成日時：2020年9月30日 14時
