Apple Tarte【zm】 ページ47
くるくると赤い果実が宙を舞った。
さりさりという音とともに赤いリボンのような皮が落ちていく。
「まだあ？」
『嘘でしょ、今皮剥いてるとこなのに。』
ケタケタ笑いながらAはなおも手を動かした。
するするする。赤い皮は見事に渦巻きを描いてまな板にぽとりと落ちた。
「すごいなあ、綺麗や。」
『自分でも綺麗だと思ったわ、』
ふふん、と自慢げに鼻で笑う。
そのまま少しだけ厚めにスライスされたリンゴは紅茶と共に煮詰められ、タルト生地のカスタードの上に贅沢にぎっしりと並べられた。
「美味そう。」
『まだ焼いてないのに？』
30分後には甘く香ばしい香りが広がる。
大量にカゴに残る赤い実を真上に投げてキャッチ。
その林檎を空中で奪ってやった。Aは少しだけ不服そうな顔をした。Aの瞳に俺が映る。のは、一瞬だけだった。ピーピー、と焼き上がりを告げる音が鳴ったのだ。
「できたあ？」
『うん、ああ、いや、待って。忘れるところだった。』
Aはシナモンを取り出した。パラパラと少しだけ多めにかけられる。柔らかいスパイスの香りがたちまち広がった。
ざくり、とタルトに刃物が埋まる。少し大きめに切られた三角形の先を向けられた。
「、旨い、旨いよ。」
『良かった、嬉しい。』
何故か涙が零れる。
『ねえ、泣かないで。』
「え、なんで泣いてんねやろ俺。なあ、Aなら分かる？」
ポロポロとこぼれ落ちた涙はタルトを濡らした。
『私が居ないことに気付いたからだよ。』
悲しげに笑みを残して君の影は消えた。
途切れた映像。
店で買ってきた食いかけの林檎タルト。
シナモンの香りなんぞ一切ない、カスタードが甘いだけの量産された甘味。
誰や恋愛にスパイスが必要なんて言ったやつ。
「お前が居なくなるなんて、隠し味のレベルちゃうやろ。」
噎せ返るほどの濃いスパイスが俺の呼吸を乱した。
_________…
最後が必ずしもハッピーエンドである必要は無いかと思い...。
これにてこの作品も終了となります。
ありがとうございました。
この時点でお気に入り116人、hit数23,000越え、評価25件です。
ありがとうございます。
では。ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
またお会いできることを心より願っております。
続編→【d!】Cherry Pie【短編集】
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ちぃ汰。(プロフ) - 琴葉さん» うわああありがとー！！そんな忙しい時に見てくれてありがとうね！！毎度毎度コメントしてくれてほんと嬉しい！マジでありがとうね！！ (2019年3月4日 14時) (
レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - お疲れ様！ずっと全部読んで、更新の度に喜んでた笑 ラストもちぃ汰らしい終わり方でめっちゃ好きやし、全部の話大好きやった！またもし新作が出来たら変わらずすっ飛んで行くね！取り敢えず、お疲れ様でした！50話おめでとう！！ (2019年3月4日 6時) (レス) id: d712e3143f (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 葉月さん» コメントして下さって、また褒めていただきありがとうございます。少しずつ更新していけたらと思いますので、どうぞこれからも宜しくお願いします。 (2019年1月27日 9時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
葉月(プロフ) - はじめまして。素晴らしい作品をありがとうございます！……ただそれが言いたかっただけです。 (2019年1月27日 4時) (レス) id: 87837aefcb (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 琴葉さん» ま、満足頂けたようで何より！！ それそれ！甘々なのじゃなくてもっとフレッシュさあるよね！(？) (2018年12月17日 17時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちぃ汰。 | 作成日時：2018年12月10日 11時
