▽ ページ22
.
幼気にふわりと花のように笑う彼女は、春の柔な陽の光と相まって美しい。思わず手を引いて彼女を傍に寄せる。まろい頬を撫でると目蓋を閉じたので、髪を撫でながら口を寄せた。勿体ない。死にゆくだけの私には勿体ない。どうしてもそう、思わざるを得ない。口からは後ろ向きな言葉が出た。
「...いい人の振りをした、悪い人もいるから。私のこと、そう思ったこと無いのかい。」
『...えみさん、悪い人なの？』
「...狡いですよね。本当に。」
『...ふふ、えみさんは良い人です、私は知っています。貴方の撫でる手に、微笑む顔に、私を呼ぶ声に、愛と優しさが詰まっていますもの。』
私の弱い心に、彼女はいつだって欲しい言葉をくれる。柔らかい彼女の手が私の手をさらに上から包んだ。死にかけの私とは違う、温かくて、柔らかい、ほんのり桃色の、少し水仕事でカサついた手。
『えみさん、』
「うん？」
『だから、死なないで。私を置いていかないで。貴方の温かい優しさに、まだ包まれていたいの。我儘な私を、許して。』
「...随分と可愛い我儘だね。」
私が答えを返すことは無かった。只、彼女が愛おしいことだけ確かだった。彼女をあと、どれだけ温めてやれるだろうか。震える彼女の手を優しく握り直しながら、私はまた口付けをして誤魔化した。彼女の恐怖と、自分の恐怖を。
──────…
??(あなたを奪うそれが、あまりにも憎い。)
??(あなたと共にいられない自分が、惨めで情けない。)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちぃ汰。(プロフ) - 椿・鵯(ひよどり)さん» 今晩は。貴方様の足が再び出向いて下さって嬉しい限りで御座います。お恥ずかしいことに相変わらずの筆運びで御座います。どうか貴殿のお気に召します頁があらんことを。 (2022年6月27日 19時) (
レス) id: 7afb004994 (このIDを非表示/違反報告)
椿・鵯(ひよどり)(プロフ) - お疲れ様に御座います。貴君がお気に召すままにあらせられる事を願っております。また一羽を見られることを密かに思っております。お目汚し失礼致しました。 (2022年6月26日 17時) (レス) @page3 id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 琴葉さん» いつもいつもお世話になっております。いつも通りの更新です。相変わらずのマイペースです。それでも宜しければ気ままにお立ち寄りくださいね。お待ちしております。 (2022年6月13日 1時) (レス) @page2 id: 7afb004994 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - Twitterを見たあとまさかと思い立ち寄れば…推し作者様の新作、本当に嬉しいです。更新はゆっくり気ままに、楽しんでお書き下さいませ。いつまでもお待ちしております。 (2022年6月9日 16時) (レス) @page1 id: 7cbb42cb9f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちぃ汰。 | 作成日時：2022年6月9日 1時
