▽ ページ50
.
『…あ、美味しいね。これ。』
｢せやろ！有名店らしいねん。｣
外は固くて、中がふわり。少しだけ薫る、上質な洋酒。そのどれもが。その菓子の全てが。
『…これ、カヌレ、だっけ。』
｢…？うん？｣
彼は不思議そうに笑う。私に笑っている。ああ、素敵だな。
よく笑うところに惚れた。口元が可愛かった。掌で隠す癖があるのが少し残念だった。目元も可愛かった。全てが愛しく思えるほど、貴方を愛してた。もっともっと、見たかった、貴方を。
『…私、このお菓子、今日初めて食べたんだけど。』
好きだった笑顔が、彼のその綺麗な笑顔が、消え失せた。
『…教えて。誰と勘違いしてるの？』
彼の暗く、焦った瞳に、赤い唇が弧を描くのが見えた。
彼好みの首を傾げる仕草だけ、サービスをしてあげる。
普段からよく回る彼の口が、今日は一段とよく動いていた。
でも、弁解なぞもういらない。
(私が、私に、戻るだけよ)
『ご馳走様、』
六個のカヌレを瞬く間に一人で平らげ、満足気に息を吐いた頃、彼の目はもうこちらを向くことはなかった。
ほろ苦く、後味が残った。
───────…
いつも通り、後味の悪い私の作品でございました。
読者の皆様、いかがでしたでしょうか。
カヌレは実は作者の特に好きな甘味のひとつでして、少しだけ力を入れて準備した次第でございます。
このシリーズも4作続きました。これも読んでくださり、評価してくださり、時たま感想やリクエストまでしてくださる皆様のお陰です。更新が遅いにも関わらず、読んでいただきありがとうございました。
続編も一応考えておりますがいかんせんネタ切れと作者の息切れ気味でございまして…。
次の作品がありましたらまた気が向いた時にでも覗いてあげてください。
感想もくれたら嬉しいな、なんて厚かましい作者の気持ちも露呈しておきます(やめてください)。
それでは。またいつかその時に。
2020/05/12 ちぃ汰。
追記:遅くなりまして申し訳ありません。
続編ができましたので。よろしければ。
→Jerry【短編集】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 207人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「d!」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちぃ汰。(プロフ) - 琴葉さん» 毎度のコメントありがとうございます。お待たせ致しましたことお詫び申し上げます。感想もありがとうございます。期待以上の感想を頂けて言葉もありません。続編前向きに検討しておりますのでどうかその時はよしなに。私もあなたのファンでございます。ありがとちゅき() (2020年5月12日 10時) (
レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - 夜分遅くに失礼致します。更新の方心待ちにしておりました、そして相も変わらず、否それ以上に素晴らしいお話に胸が苦しく、また切なさが込み上げました。良ければ続編をと思いますが作者様の手が動く限りで構いません。私は何時までも貴方様のファンです。とりますき() (2020年5月12日 0時) (レス) id: fea4b79f15 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - つらら@ちゃげっ娘。鬱紺色 逆音さん» とんでもございません、しっかりと寝てましたすいません...。ありがとうございます...。勿体ない言葉...。 (2020年1月28日 8時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
つらら@ちゃげっ娘。鬱紺色 逆音(プロフ) - 夜分遅くに大変失礼でしょうが...これだけ...好きです。 (2020年1月28日 3時) (レス) id: 9e136fef77 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 夢川さん» いえいえ、全く気にしておりませんのでそんなにお気を使われないでください！感想頂けてとても嬉しいです。星の子一家に一人要りますよね笑 こちらこそリクエストありがとうございました。よろしければまたリクエストしてくださいね。(お仲間でしたか笑) (2019年11月5日 20時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちぃ汰。 | 作成日時：2019年10月6日 18時
