落下星【em】 ページ41
·
ぱしゃん。
振り返って目にした光景にしては、やけに軽い音だった。
「…A?」
その日、Aは海で倒れ、植物人間となった。
『疲れたから、海でゆっくりしたいな。』
ここ最近バタバタしてたもんな、ええよ行こか。
零した言葉の、それくらいの気持ちで俺は車を回した。
Aは笑ってた。倒れる寸前の、その瞬間まで。
ストレス発散になれたかな、良かった。
ああ、ここに綺麗な貝殻あるで、A、こんなのインテリアにするの好きちゃうかった?
そう言おうとして振り返ろうと思ったんだ。
やけにあの音が耳に残る。
医者は神経性の何かが、どうとか言っていた。
要するにいつもの目まぐるしさと忙しさにここ最近のバタバタが重なって体がキャパオーバーを迎えたのだと。
気に止めていたつもりだった。体を休めろと注意もしていた。それでも、油断していた。自分に見せる顔が、余りにも綺麗な顔で、もしかしたらそれすらも気遣わせていたのかもしれなくて。
「情けないな。俺。」
頬をゆるりと撫でる。ちらりと覗いた耳に、星のピアス。
いつだったか自分が彼女に買ってあげたものだった。
傷つけぬよう外してやり、もう片方も、と覗いた彼女の向こう側。
ピアスはなかった。
(あの日、倒れた時か。)
それなりに広い砂浜だった。小さくて砂によく似た色。
加えて随分とたった日付。もう見つかることは無いだろう。
「…何も、見つけてあげられんなぁ。」
掬いあげた髪が、はらりと落ちた。
あの日から少し、伸びていた。
_______…
リハビリ。
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ちぃ汰。(プロフ) - 琴葉さん» 毎度のコメントありがとうございます。お待たせ致しましたことお詫び申し上げます。感想もありがとうございます。期待以上の感想を頂けて言葉もありません。続編前向きに検討しておりますのでどうかその時はよしなに。私もあなたのファンでございます。ありがとちゅき() (2020年5月12日 10時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - 夜分遅くに失礼致します。更新の方心待ちにしておりました、そして相も変わらず、否それ以上に素晴らしいお話に胸が苦しく、また切なさが込み上げました。良ければ続編をと思いますが作者様の手が動く限りで構いません。私は何時までも貴方様のファンです。とりますき() (2020年5月12日 0時) (レス) id: fea4b79f15 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - つらら@ちゃげっ娘。鬱紺色 逆音さん» とんでもございません、しっかりと寝てましたすいません...。ありがとうございます...。勿体ない言葉...。 (2020年1月28日 8時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
つらら@ちゃげっ娘。鬱紺色 逆音(プロフ) - 夜分遅くに大変失礼でしょうが...これだけ...好きです。 (2020年1月28日 3時) (レス) id: 9e136fef77 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 夢川さん» いえいえ、全く気にしておりませんのでそんなにお気を使われないでください!感想頂けてとても嬉しいです。星の子一家に一人要りますよね笑 こちらこそリクエストありがとうございました。よろしければまたリクエストしてくださいね。(お仲間でしたか笑) (2019年11月5日 20時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちぃ汰。 | 作成日時:2019年10月6日 18時