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背中の温もりは、昨日感じたそれと何も変わらない。
足は私の体横へ、逃がさないとばかりに置かれた。
「...どこ、行くん。」
『...。』
「...置いて行くん、俺を、」
肩に預けられたふわふわの柔らかい毛の感触。反射でその薄水色の髪を撫でようとしたが、やめた。
変な情を残していきたくない。
「...答えてや...、どこ行くんや...俺置いて、」
私の首筋を水滴が伝う。そんなハズないのに、昨日散らされた彼の印が流されるような感覚がした。だんまりな私に彼は問いの答えだけを求めた。置いていくな、連れていけ、とは決して言わなかった。
「...ねぇ、どうしてｯ...好きや...Aｯ、...。」
彼の喉がきゅう、となった。嗚咽を零し始めた。
もう、ここにはいられない。じゃあね。心の中で呟いて、彼の巻きついた手に触れる。
「！、いや、...嫌や...」
心が痛い。彼の手は血の気が引いていて、冷たかった。触れた瞬間力が籠ったが、剥がせないほどではなかった。ずる、と衣擦れの音ともに温もりは離れた。震える彼の手を離すと、力無く手はことりと床に下りた。
「...A、Aさん、」
私の名前を、こうして繰り返し呼ぶ時。私は知っている。きっと彼のアプリコットオレンジの瞳はこちらを向いていて、私が振り返るのを待っている。振り返れば、満面の笑みで彼は笑うのだ。それが分かっていた。だからやめた。振り返らなかった。もう私は、ここから居なくなるのだから。
『...さよなら。』
「...。さよ、なら。」
彼の名前も呼ばなかった私に、遂に諦めたような声だった。
けれどそれだけは、最後の声だけは焼き付けんとばかりに耳を澄ませた。扉は後ろ手に閉じた。彼の瞳は、とうとう昨日までの記憶のままだった。
私は知らないフリをする。彼のすすりあげる声を。
仕方ないじゃない。
私だって濡れた視界をどうにかしなければ。
__________…
(貴女に会う言い訳をひとつくらい残していけば良いのに、貴女はただのひとつでさえも残してくれなかった。)
(残ったのはただの水溜まりだった。)
何で離れるのかよく分からないけどここだけ書きたかったので供養。
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ちぃ汰。(プロフ) - 琴葉さん» 毎度のコメントありがとうございます。お待たせ致しましたことお詫び申し上げます。感想もありがとうございます。期待以上の感想を頂けて言葉もありません。続編前向きに検討しておりますのでどうかその時はよしなに。私もあなたのファンでございます。ありがとちゅき() (2020年5月12日 10時) (
レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - 夜分遅くに失礼致します。更新の方心待ちにしておりました、そして相も変わらず、否それ以上に素晴らしいお話に胸が苦しく、また切なさが込み上げました。良ければ続編をと思いますが作者様の手が動く限りで構いません。私は何時までも貴方様のファンです。とりますき() (2020年5月12日 0時) (レス) id: fea4b79f15 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - つらら@ちゃげっ娘。鬱紺色 逆音さん» とんでもございません、しっかりと寝てましたすいません...。ありがとうございます...。勿体ない言葉...。 (2020年1月28日 8時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
つらら@ちゃげっ娘。鬱紺色 逆音(プロフ) - 夜分遅くに大変失礼でしょうが...これだけ...好きです。 (2020年1月28日 3時) (レス) id: 9e136fef77 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 夢川さん» いえいえ、全く気にしておりませんのでそんなにお気を使われないでください！感想頂けてとても嬉しいです。星の子一家に一人要りますよね笑 こちらこそリクエストありがとうございました。よろしければまたリクエストしてくださいね。(お仲間でしたか笑) (2019年11月5日 20時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちぃ汰。 | 作成日時：2019年10月6日 18時
