深淵に沈む (ページ21)

今日:2 hit、昨日:7 hit、合計:16,292 hit

･ページ21

大我side

腕の中で大きな身体を丸めて眠るジェシー

頭を俺の胸に預けるように置いてる

目には涙のあとが残ってて

いつも俺達を引っ張ってくれる大きな背中はなんだか小さく見えた

少しでも安心させてあげたくて、不安を取り除いてあげたくて

優しくそっとジェシーの頭を撫でた

何度も色を変える髪の毛は傷んでいるはずなのにふわふわで

撫でる度に俺と同じシャンプーの匂いがした

出逢ってから少しして聞いたジェシーのこと

ジェシーはアメリカ人の父親と日本人の母親の間に生まれた

ハーフってだけで小さい頃は嫌がらせを受けたことがあったらしいけど

中学に上がればジェシーに向けられる視線は良いほうに変わった

まあジェシーはかなり顔が整ってるし面白いから、女子も男子も放って置くわけない

ジェシーが小学4年生になった頃、突然、父親と母親が変わってしまった

まだ幼なかったジェシーを1人家に置いて2人は夜の街へ繰り出し

3日、4日家に帰らないなんてことはざら

帰ってきたと思えば、酒に酔っていて

泣きながら嫌がるジェシーに手を上げ無理やり酒を飲ませたり

無理やり煙草を吸わせたり

苦しくて悶え、咳き込み、嘔吐するジェシーをみて

2人はただ嘲笑っていたらしい

突然変わってしまった両親に頭が追い付かないのも無理は無い

世界は残酷だ

どれだけ幼いジェシーが純粋な心で必死に理由を知ろうとしても其れは未だ分かず終い

其れもその筈。そもそも理由なんて大層れたものはないのだから

この事を話すジェシーは酷く辛そうだった

なぜ話してくれたのかと聞けば

ー『…みんななら、どんなオレでも受け止めてくれると思って』

出逢ってまだ半年も経っていない頃、そう言ったジェシー

生まれて初めて、この事を誰かに話したと語るジェシーの瞳は不安げに揺れていた

今でも鮮明に覚えてる

身体を大切にするジェシーが煙草を吸っている理由も知った

勿論、俺達の中で誰か1人でも、ジェシーを拒絶するなんてことは有り得ないんだ

そうすればジェシーは安心したように

いつもの豪快な笑い方じゃない

照れたような、安心したような静かな笑いを零した

ジェシーのこの話がきっかけで、俺達がどこか似ていると感じた理由はそれぞれが確信したと思う

その時、俺達はお互いがお互いを守っていこう

何があっても

支えていこう

そう誓いあった

･