第六十七話 ページ17
4月に入り、シアタークリエで行われる公演の稽古がスタート。
舞台慣れとは言わないけど、メンバーからアドバイスを求められる事が増えたりして、自分の成長を感じる事が出来た。
けど、いざエリザの稽古が始まったら
成長したのか、、俺？状態。
二度目の壁だ。
一度目よりも遥かに分厚い壁が立ちはだかる。
再演の難しさを突き付けられる毎日。
前回よりも、求められる物が多くて
早くもメンタルボロボロだし
もうすぐ、クリエで公演だし・・・あぁ。
と、思わず溜息が溢れた瞬間
『お疲れ様でーす！！』
「えぇ、Aさん？」
「Aじゃん！」
稽古場にAちゃんが現れた。
床に座り込んでた俺もすぐ様立ち上がって
彼女の元へ向かおうとしたけど人集りが出来て近付けない。
「凄いなぁ、、Aさんっ」
「蘭乃さん・・・」
うぉ、、気不味い。
"支えてあげてね"
そうだ、気不味いとか思ってる場合じゃない。
蘭乃さんにとって彼女がどんな存在か分からない。
でもこの人だって・・・きっと
「蘭乃さんっ、行きましょう」
「え？」
「挨拶です。一緒に」
「ちょ、、待ってっ」
「お疲れ様です」
『あっ、大我。それに蘭乃さん、お疲れ様ですっ』
元エリザベートと現エリザベートの対面。
余計な・・・事した・・・かも？
と、稽古場の雰囲気に後悔しかけた時
「Aさんっ・・・ずっとお会いしたかったです」
蘭乃さんが彼女の手を握って微笑んだ。
『嬉しい。ありがとうございます』
「まさかお会い出来るなんて」
『その前に』
「？？？」
『ご卒業おめでとうございます。蘭乃さんが演じられたエリザベートとても素晴らしかったですよ』
「み、観てくださったんですか！！」
『はい！もちろん！』
「嬉し過ぎますっ」
『退団されてからの舞台で色々緊張されると思いますけど、楽しんでくださいね』
「あ、ありがとうございます・・ほんと、本当にっ」
『いえいえっ』
二人のやり取りに、どこからともなく拍手が起こった。
『それじゃ、私も稽古場戻りまーす(笑)』
「頑張れー(笑)」
『みなさんもー』
「京本さん」
「？？」
「ありがとう」
「いや、何もしてませんよ？」
「Aさんと話せて良かった。京本さんに言われなかったら多分私Aさんの所に行けなかったと思う・・・だから、ありがとう！」
「とんでもないです！」
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作者名：しぃ
| 作成日時：2023年10月6日 20時
