【midnight】-1- (ページ36)

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大我君の家に行った日から数日。
鍵とカード、そして帽子はまだ手元にある。

『あ、もしもし。Aです』
「この間お預かりした帽子ですが、今日の午後にお渡し出来ますよー！！」
『ありがとうございます。閉店までに伺います！』

お世話になってるクリーニング店のスタッフさんからの電話。
もちろん、クリーニングしたのは大我君の帽子。

お風呂も入ってないまま借りちゃったし
少し汚れもついてたから・・思わず余計な事を。

でも、別に悪い事じゃないよね。
なんて思いながら、会社を出た。

駅に着いてパスケースを鞄の中から出していると

「あれ、A？」

名前を呼ばれた。

『ん？・・・あぁっ玲奈じゃん久し振り！』
「うわーホント久々！げんきぃ？」
『元気元気〜昼の仕事頑張ってるよ(笑)』
「あ、そっか。Aって働いてたっけ(笑)」
『そうだよ〜昼がメイン(笑)』
「今帰り？」
『うん』
「じゃあさお茶しない？カフェ行こうよ」
『んーまあ別にいいけど。玲奈は大丈夫？』
「大丈夫！買い物してただけだし♪」
『そっか』

一ヶ月？振りの玲奈。
店で会う以外そこまで関わりなかったけど
誘われたし、時間もあるし、玲奈の誘いに乗った。

『え？店変えたの！？』
「うん、もう在籍してない！」
『そうなんだ、知らなかった』
「まあ辞めたの最近だし」
『で？今は？』
「六本木！スカウトされてそのまま入った(笑)」
『なるほど』
「そうそう。Aも来る？」
『いやいや、私は行かないよ。今の店も出勤すらしてないのに』
「残念〜割と有名人来るのに〜」
『へぇ、このご時世でも？』
「うん。俳優とか、業界の人？あとジャニーズ」

いつもなら何とも思わないその言葉に
"玲奈はジャニオタ"
麻里亜の話を思い出して
『興味ないからなぁ。詳しくもないし』と、流した。

「確かにAってアイドルとか疎いもんねー」
『そうそう』
「でもさ、篠村さん達と飲んだ事あるでしょ？」
『あったかなー？』
「絶対あるよ！一月だっけ？ん？あれ？」

これ以上飲み会の話を続けるのはマズい。
そう思って話題を変えようとしたら

「多分二月だ！きょも誘われてたし！」

・・・・きょも？

きょもって・・・

「ごめん、きょもって京本大我の事！あの〜でもA知らないか(笑)」

彼の名前に血の気が引いた。