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"どうして出来ないの?"
"期待の星よ"
"こんなんじゃ、賞なんてとれない"
"恥をかかさないで!"
"将来は私達と同じ道を進んで欲しいの"



親や周りの期待を背負って
弾き続ける事がどれだけ辛かったか。

ピアノがあるから友達とも遊べない。
幼い頃からずっとずっと。

それが私の中で当たり前だったけれど付き合い悪いとか
ある一定の時期から言われだして気付けばいつも一人。

ただピアノと向き合う事しか許されない日々。


好きだけじゃダメなの?って。
言えなかった、あの頃の私。


"貴女にはピアノしかないの"


何の為に誰の為に音を奏でているんだろう。


自由になりたい。って
こんな狭い世界から抜け出したいって。


でも、無かったことになんか出来ないんだよ。



『ごめっ、、』
「あーハンカチ持ってないや」

そう言って、服の袖で涙を拭おうとする彼

『ちょ、大我君っ』
「何で止めんの」
『だ、だって・・メイクついちゃうっ』
「確かに」

と、納得した様子の彼の指が頬を撫でる。

「んじゃ、これで」
『・・・』


指先の冷たさが私の熱で消されてゆく。


「ふは、固まってるし(笑)」
『び、びっくりした』
「眺めるだけの男じゃないからね」

『眺めるだけ?』
「俺にも人の心があるみたい」

訳の分からない理由だったけど
大我君らしいと言えばらしい言葉に涙が止まった。





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





ちょっとしたハプニングの後はお酒と共に
大我君の話をたくさん聞かせてもらった。


"京本大我"として生きる事。

「入った頃は想像もしなかったよ。父親の存在がここまで影響するなんて」
「七光りだとか。散々言われて。俺自身を見てくれないの」
「けどさ、ちゃんといたんだ。腐るなよって言ってくれる人達が」
「満足する事なんてないんだろうな〜苦しんで足掻いて進むしかないと思ってる」



『大我君は考え方が大人だね』と言えば
「なりたくなかったけど」そう彼は笑った。




言葉の一つ一つがこんなにも力強いのに
どこか儚さや脆さを感じてしまう。




『大我君』


「んー?」


『壊れないでね』






「壊れたら直せばいい」






直せない物もあるよ。とは言わないでおこう。




きっと彼も分かってるはずだろうから。






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作者名:しぃ | 作成日時:2023年5月11日 17時

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