【カレとカノジョ】 (ページ6)

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"A"

私の名前を呼んだ彼に胸がドキッとした。
彼の中で、きっとあの頃のままなんだろう。

逆に私は優吾とは・・・呼べなかった。

一応別れたわけだし・・・
周りも私達が付き合ってたなんて知らないから。

それに、今の彼を気安く名前呼びすれば
どこから矢が飛んでくるか分からない。

だって、もう有名人だしね。
住む世界が違う。

こんな風に考えてしまうのは私の悪い癖。
でも実際そうでしょ。

少しばかり周りの視線が痛いのは気のせいじゃない。

ー・・・

合流してから約2時間。
二次会に向けてやり取りが行われ始めた。

「二次会どうする？」
『明日も早いし、帰るよ』
「俺も帰ろうかな」
『そっか』
「まだ実家なの？」
『なわけないじゃん、一人暮らしだよ』
「こっから遠い？」
『うーん、、まあ、、』
「一緒に帰る？タクシーだけど」
『いや、いいいい！！美佳と帰るから！』
「え、でも山森、、二次会行くって」
『・・・・』
「聞いてなかったんだ(笑)」
『(美佳のやつぅー！)』

そんなこんなで・・・タクシー待ちの私達。

『ねぇ』
「ん？」
『大丈夫なの？』
「何が？」
『バレない？』
「バレないって、、俺のこと？」
『優吾以外誰がっ・・・あっ』
「しまった！みたいな顔しないでよ」
『ごめん、、ついっ、、』
「別に俺は気にしてないし」
『・・・』
「まあ・・・ちょっと寂しい気はするけど」
『はい？』
「いや、何か他人みたいじゃん」
『・・・』
「今更変えなくても、、いいんじゃない？」
『うっ、、うん』
「Aの高地呼びの方がかなりレアではあるけどね(笑)」
『・・・そう、、かな』
「そーそー」

さみぃ〜死ぬぅ〜とか言いながら手を擦り合わせる彼。

その姿が懐かしい。
こんな風に電車待ってたっけー・・・

浮かび上がる思い出がじんわり心を温めた。