第8話 ページ9
翌朝、半年前に出たアルバムを聴きながら登校すると、教室が色めきだっていた。
｢やばくない？？見た？まじでカッコイイんだけど！｣
｢見た見た！身長高くない？無理なんだけどぉ！｣
｢え、でもなんか怖くなかった？｣
｢仕事中だから気ぃ張ってんじゃない？あれは絶対彼女とかの前だとふんわり笑っちゃうタイプだって！｣
｢えぇぇ〜なにそれ最強すぎん！？｣
以前、教育実習生としてきた男子大学生を見たときと同じ反応をしている彼女らに声をかける。
｢おはよ、何かあったの？｣
｢あ、舞！おはよ！舞も見た！！？｣
｢？何を？？｣
｢めちゃくちゃカッコイイ刑事さん！！昨日、パトロールしてくれてたの！｣
彼女は新体操部の強化選手に選ばれており、昨日もきっと練習は遅くまで続いたはずだ。そんな時間まで回っていたのか。
｢ホワイトヘアのひと？見たよ。｣
｢今、学校中で話題になってるの！'白騎士'ってあだ名で回ってるのよ！｣
随分とロマンチックな名前を付けられたんだなと、吹き出してしまいそうになったが、ぐっと堪えて、当たり障りない返答をする。
2,3日もすればこの話題も冷めるだろう。そう思いながら、イヤホンをスクバに仕舞おうとしていたときだった。
｢ってか、舞、その人と一緒に歩いてなかった？｣
クラスメイトの一人から爆弾を落とされる。
｢え、何知り合い？｣
｢いや、ただ駅まで送ってもらっただけだよ。ちょうど一人だったから。｣
勘ぐる目が途端に現れる。
ただただ面倒だ。ここでまた何か言うと余計に触発してしまうだろう。そう考え、興味のない心情をしっかりと表に出す。
ぽつりぽつりと安心した顔に戻っていくクラスメイトを横目で確認し、席に着く。
今日は早めに帰ろう。
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作者名：白坂翠 | 作成日時：2020年10月26日 2時
