第7話 ページ8
ー速水舞sideー
やっぱり今日は厄日なのかもしれない。
家に着き、ショッパーを開くと自分が買った記憶のないものが入っていた。
正確に言うと、私が買ったものは初回限定盤のAタイプであるはずなのだ。しかし、今手元にあるのはタイプB。レシートを確認するとしっかりとAの文字が記載されている。
間違いなく、あのとき取り違えたのだ。
「最悪……」
ため息がこぼれる。あっちもきっと、どうしようかと悩んでいるだろう。微妙な共通点を持っているというとこが、尚更憂鬱な気分にさせる。
全く共通点がなければ、諦めてもう一枚買おうという意欲が湧く。だが、取り違えた相手の高校も名前もわかっているこの状況では、この間違えを正すことが最適解だろう。つまり、
「…直接交換するしかない。」
しかもこの場合、高校まで行くしか無いのだろう。社交的なタイプではないようだし、同級生たちに連絡先を聞くなんてしてしまったら、その日の昼休みはひそひそ声が姦しく、忙しなく動く眼はいやらしい事だろう。
様々な渡し方を考えるも、マイナスな要素が多すぎて、そのストレスで身体が重くなっていくのを感じる。
だめだ。ちゃんとご飯を作って、湯船に浸かろう。
いつもしている事をして、落ち着くとこがなにより大事だ。
丁寧にショッパーをスクバに滑り込ませ、浴室へ向かった。
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作者名:白坂翠 | 作成日時:2020年10月26日 2時