第4話 ページ5
放課後、ウォークメンにインナーイヤー型のイヤホンを繋いでローファーを取り出す。
今日は推しバンドのCDと都築誠のシリーズ最新作が発売されているはずだ。
駅前のキャッスルレコードと天ノ国書店に寄って帰ろうと校門を出たところ、違和感を覚える。
普段なら帰宅部の生徒がもっと歩いてるはずの時間なのに、誰の姿も見えない。
そう言えば不審者の話して…
思い出した瞬間、後ろから肩を掴まれた。
「っっーーーー!」
振り払って距離を取りつつ、振り返るとそこには綺麗なホワイトヘアに緑の双眸を持った男性が居た。
…不審者にしては顔面偏差値高いな。
「…なにか。」
「…悪い、驚かせるつもりは無かった。」
そう言って男性が取り出したのは警察手帳だった。
「不審者が出てるって学校側から聞いてるだろ。一人で帰るな。」
「…警部さんがわざわざパトロールするほどなんですか。」
聞かれると思ってなかったのか、彼はぴくっと眉を動かした。
「まぁ、それくらいの危機感くらいは持ってても損はないな。」
ぶっきらぼうにそう告げ、大通りまで送る、とこちらが返答する前に歩き出した。
お互い一言も喋らず、半歩後ろを私がついて行く形で大通りまで歩いた。
「ありがとうございました。」
「あぁ。」
彼は私を一瞥すると、踵を返してまた高校の方へ向かって行った。
「荒木田蒼生さん、か。」
手帳の名前を思い出し、呟く。
今回限りの縁である事を願って。
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作者名:白坂翠 | 作成日時:2020年10月26日 2時