君の声が聴きたい② (ページ4)

今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:5,987 hit

天然タラシページ4

彼女はキラキラした顔でずっと校舎を見回していた。

グイッと急に袖を引っ張られる。
顔を向けると、チュロスと書かれた看板を指差している彼女と目があった。

『食べたいんか』

そう聞くと、コクコクを頷き、携帯に

『御堂筋くんも食べる？』

とメッセージを送ってきた。

『ボクは別にいらんから、Aさん買ってき、ここで待っとるから。』

帰ってきた彼女は美味しそうに食べていた。
それが小動物のようで可愛くて見つめていると、チュロスを食べたいと勘違いしたのか、どうぞと差し出してきた。天然なのかわざとなのかわからないが、差し出されたチュロスを大人しく食べた。

(まぁ、なんもわかっていんやろな。)

『おおきに、でもボクぅと、間接キスしてもうたねぇ？』

そう言うと、彼女の顔は真っ赤になった。もっともっと意識して欲しい、こちらを見て欲しい、そんな独占欲がふつふつと湧いていた。

『ジョーダンや、高校生ならこれくらい誰とでもやるやろ。はよ食い。まだ回りたいところあるんやろ。』

そう急かすと彼女は小さな口で一生懸命チュロスを食べきり、勢いよく立ち上がる。

『次行こう！冷やしパイン！あとワッフルも食べたい！』

とまだ冷めきってない顔で急いでメッセージを送る。

『食いもんばっかりやないか、まぁそれなら向こうやな、行くで』

そう言って歩き出した。
少し意地悪し過ぎたかと思い、隣にいる彼女を見る。
が見つめた先は知らない生徒たちで溢れていた。

(な、どこいったんや。)

焦って辺りを見回すと、3メートルほど後ろで、人集りに埋れていた。
こちらに気づくと背伸びをして手を振ってくる。

こういう時ばかりは背が高くてよかったと思う。

『なにやってんのや』

そう言って彼女の手を握り引き寄せる。
しゅんとした彼女が

『ごめんなさい、人に流されてどんどん後ろの方へ、』

と申し訳なさそうな顔でメッセージを送る。

彼女の悲しそうな顔を見たくない。

『別に怒ってへんよ。ただまたはぐれたらめんどくさいからどっか捕まっとき。』

そう言ってまた歩き出すと、彼女はそっと小指を握ってきた。

『～～ッ！？！？』

驚いたのを悟られないように彼女を見る。真っ赤な耳が髪の間から覗いていた。

(そこは、普通、袖とか上着とかやないんか……。)

これも天然なのか、あえてそうしているのかと頭の中で駆け巡り思考回路はもうショート寸前だ。

(この天然タラシが、)

そう悪態をつきつつ、彼女の指をそっと握り返した。