忘れられない人１ ページ28
年が明けて、気付けばすでにジョンフンと別れて1年が経とうとしていた。
私は仕事に追われ、週2日の休日はぼーっとしてるか、ゆり達に誘われて出かけるかという日々を送っていた。
あれから、三浦君は普通に接してくれてる。
「好き」という言葉もあれ以来言われていない。
言われていないけど、行動の一つ一つに優しさが溢れていた。
その優しさは嬉しかった反面、これ以上三浦君の気持ちをぶつけられるのが怖かった。
三浦君が怖いのではなく、流されそうになる自分が怖かった。
ちょうどこの頃、インフルエンザが流行っていたけど、
普段滅多に風邪などひかない私は、まさか自分がかかるなんて思ってもいなかった。
その日、仕事が終わって家に帰ろうとすると、なぜか寒気が止まらなかった。
今日は早く寝よう
そう思って家に帰ってきたのはいいけど、だんだん頭も痛くなって、体の節々が痛い。
倒れるようにベッドに横になってはみたものの、具合はよくなるどころか悪くなる一方だった。
水を飲みたくても目が回ってキッチンに行くこともままならない。
震える手でゆりに電話をかける。
『ゆり…ごめん、ちょっと……たすけて』
電話口でゆりが何か言ったけど、なんて言ったのかわからないまま私は意識を失った。
・
・
・
夢を…ジョンフンの夢を久しぶりに見た。
夢の中のジョンフンは愛しそうに私を見つめている。
細くて大きな手で、優しく私の頭をなでてくれる。
私はその手をしっかりと握り締めた。
もう二度と、離れないように
なのに、ジョンフンはどんどん遠くに行ってしまう。
待って…
行かないで…
行かないで……ジョンフン…
・
・
・
「……っ！A！」
『……ん…』
意識が戻って目を開けると、ゆりが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
そしてその隣には三浦君がいた。
ゆり「大丈夫？チャイム鳴らしても出ないから、管理人さんに言って開けてもらったんだよ。そしたらベッドに倒れてるし、熱測ったら40度あるし」
40度……そんな熱初めて出したな…
ゆり「とりあえず、病院に行こう？」
起き上がろうとした時、おでこから氷嚢が落ちた。
ゆり「あ、それさっき三浦君にAを見ててもらって、私が買ってきたの」
さっき…
ゆり「A、三浦君の手を握って離さなかったんだよ？笑」
ラッキーアイテム
革ベルト
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作者名：ぴょん
| 作成日時：2012年5月23日 8時
