38話 ページ39
me side
呆然としながら馬車に揺られる。今朝、ゾムさんから言われたあの言葉が、私の頭の中でずっと巡っている。
ci「ゾムさんに何か言われてたみたいですけど、なんかあったんです？」
ぼーっとする私の顔を覗き込んで、私の肩を叩く。私は少し肩が跳ねるが、ふにゃっと笑顔を作り誤魔化す。
『いやぁ…ゾムさんに少し作法のことを言われて、それがとても意外だったもんで……』
em「へえ。あのゾムさんが。」
os「ふぅん……どんなこと言われたん？」
『ナプキンはしっかり持てよ……と』
もちろん嘘だ。
os「へぇ〜！あのゾムが！エーミールが羨ましいから勉強でもしたんかな？」
em「勉強しても、香水の匂いは苦手で行きたがらないと思いますが」
多分ありえないだろうという様子でエーミールが言う。ゾムさんは1度、社交パーティへ出席したことがあったそうだが、服は動きづらいわ女はまとわりついてくるわ香水の匂いがくさい等、沢山の愚痴を私に話していた。
『ですね。でも見てみたかったです。御三方以外の方々の礼服。』
これは本心だ。出迎えの時のあの軍服でも物凄く似合っていてかっこよかったのだから、パーティなんてもし全員が参加したら、今よりもずっとかっこよくなるのだろう。女性方の気持ちがよく理解できる。
os「じゃあ今度うちでパーティ開こうや♪」
ci「良いですね！高級食材の輸入は任せてください！」
em「そんな簡単に言えますか……」
エーミールの言葉にうんうんと頷く。というか思いつきでパーティを開けるのか。飾り付けやら料理やら招待状やら色々大変そうである。
オスマンさんがそういえば…と何かを思い出したように言う。そしてその後オスマンさんが言った言葉に、私はまた驚く。
os「Aちゃんは、俺の"婚約者"って体で出席するで。」
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作者名：律 | 作成日時：2022年1月6日 17時
