34話 ページ35
me side
『では、本日もよろしくお願いします。エーミール先生』
エーミールに習った言葉遣いと礼を早速実践する。こうしないと早く上達しないからね。
em「はい。では前回やった続きですが…」
と、社交辞令を次々と覚えていく。ワインの頂き方や食事の作法など、手順が多くて大変だ。貴族の方々はこれを日常的にやってると思うと尊敬の念が湧いてくる。
社交辞令の勉強が終われば次はダンスの練習。私はエーミールに身体を支えられてステップを踏む。
em「ここで…そう。上手です。では次は…」
次の瞬間、私の身体が持ち上げられてふわりと宙へ浮く。私の目線の下にはエーミールが優しく微笑んでいる。その笑顔に、トクンと胸が高鳴ってしまう。…あれ？
『わ……』
em「着地する時も私が支えるので大丈夫ですよ」
そんなエーミールの言葉も聞こえず、ただ少し心臓の音がうるさくて。集中できない。…なんで？
em「……A？」
『えっあっはい！分かりました！』
名前を呼ばれてはっとする。エーミールが少し首を傾げたが、またいつもの調子に戻る。至近距離まで近付いている顔に気付いてしまった。綺麗な顔に見惚れてしまう。
em「そして今度は…どうしました？私の顔に何かついてますか？」
『はっ……いや！なんでもないです！』
いつも通りにやってるのに。なんでなんだろう。…昨日しっかり休んだよな？
『……ふぅ。今日もありがとうございました。』
訳が分からぬまま時間が過ぎていった。窓を見れば夕日が差し込んでいる。
em「お疲れ様でした。だんだん上手になってきてますよ。」
『まだ覚束無い足取りですがね〜…失礼しました』
em「はい。また明日。」
扉を閉めて歩き出す。平然とした様子で歩いているが、顔が熱を持っているように熱くて困惑してしまう。
『ほんとに……なんなんだ……』
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作者名：律 | 作成日時：2022年1月6日 17時
