10話 ページ11
em side
城に着くとなにやら騒がしく人通りが多い。総統を連れ出している間にこんなに時間がかかってしまった。廊下を歩いていると私たちを見た兵達が端により礼をする。そして向こうにAが立っていた。そんなAを見た兵達がひそひそとなにか喋っている。こちらからは聞き取れない。
しかしAにはしっかりと聞こえていたのだろう。彼女はゆっくりと目を瞑り何かを考えるように、静かに立っていた。……おそらく何かよからぬ言葉でも言われたのだろう。心做しかAの顔が苦しそうに見えた。私はその顔があまりにも堪らなくなってしまった。
em「おまたせしました。A。」
そう声を掛けると彼女は目を開けてびっくりしたように私を見つめる。あぁ多分これ嫌われたな。というか今はそんなこと思うところではない。
em「ほら。グルさん。あまりAとトントンさんを困らせないように仕事して下さい。」
トントンさんとAがあなたの仕事負担してるんですよ。自覚して下さい。
gr「ぐぅ……まだパフェが途中だったんだゾ…」
あぁ…もう本当にこの人は…まだこんなこと言ってる総統に溜息をつきながら
em「その前に仕事と謝罪。ほら、さっさと行って下さい」
そう急かしながら言うとグルさんは理解したのか不服そうな顔をいつもの総統の顔に戻して
gr「…あぁ。すまなかったなA。ご苦労だった」
グルさんからAへの謝罪の言葉を貰ったので書記長室へ放り投げる。私は謝罪の言葉よりも、Aの辛そうな顔が心配だった。
em「…また何か言われたんですか。」
そう聞くとAは無理に笑顔を作って元気な調子を出しながら
『……別に。いつものことですよ。それに事実ですからね！いやぁでも仕事したんですよ？トントンさん仮眠させて、3人引っ張り出してきましたし！…あと』
Aは申し訳なさそうに俯いてまるで怒られた子供のように弱々しい声で
『…エーミールにまた迷惑かけて…ごめんなさい……エーミールだって忙しかったのに……』
あぁ、またこの子は自分を責めてしまっている。この子がただ生きているだけで私は嬉しいのに。ただの女の子がこんなにも使命感を負うことはないのに。元は勝手に私がやったことだ。何も悪くない。
em「いえ。私が書斎へ行っている際に勝手に盗み聞きしてしまったのが悪いですよ。気にしないでください。」
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作者名：律 | 作成日時：2022年1月6日 17時
