step by step (ページ8)

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山梨ロケ① ページ8

今日の山梨ロケは早朝から行われる。作中は4月の設定だから機捜ジャンバーの下もしっかり着込んでいるわけじゃないけれど、現実はまだ春先。場所柄もあって、ベンチコートを着込んで、白い息を吐き出す。
でも。目の前に広がる富士山はすごくきれいで、マネージャーに言われるがままにそれを背にして写真を撮った。

「インスタ用？」
「そうです。宣伝に」
「いいねえ」

同じくベンチコートを着込んだ綾野さんが、ポケットに手を突っ込んでこちらにやってきた。

「あ、綾野さん」
「うん？」
「あの、速く走れるように見えるコツってありますか？」
「見えるでいいんだ？」
「…あとは努力でカバーします」
「あはは、いいね」

このあとの撮影は男性トイレから逃してしまった加々見を咄嗟に走って追うシーンがある。それも最終的には振り切られてしまうのだけれど、優秀といわれていた青葉のポテンシャルが見える大事なシーン。
それを私が表現出来るかが非常に問題で。

「そうだなぁ…まず腕はいっぱい振る。そしたら自然に足もついてくるよ」
「なるほど…」
「あとは顎上げたら苦しそうに見えるから、そう見せたい時までは引いておくこと」
「勉強になります」
「いえいえ。Aちゃんが走るとこ見とくよ」
「えっ、申し訳ないです。寒いのに」

私が走るシーンは私だけか、松下さんと2人のシーンで404は出てこない。となると暖かいところでゆっくり自分の出番まで休んでもらいたいところだ。

「仲間が頑張ってるんだから応援しないとね」

これが座長の力。当たり前にそう言われてしまって、私は頷くしかない。

それからテストとリハのあと、私は綾野さんが見守る中、全力ダッシュを何本もした。事細かにアドバイスをくれる綾野さんには、感謝してもしきれない。