step by step (ページ7)

今日:33 hit、昨日:26 hit、合計:30,563 hit

メロンパン号での撮影ページ7

1話での登場シーンが少なかったけれど、逆に2話の青葉は廃車にした404のお目付役を、隊長から命じられて行動を共にすることになる。

『メロンパンいくらにするー？1個1000円かなあ』
『高いだろ』
『だってメロンパンまるごと入ってるんだろ』
『入らない。メロンまるごと入るパンってどれだけでかいんだよ』

運転席と助手席でテンポのいい掛け合いをしていく2人を、その後ろの席から聞いている。
小道具のノートパソコンを膝の上に置いて、私はあくまで自分の仕事をしている風だ。

「はいカット！一旦車止めます」

牽引している車が止まるとメロンパン号も止まる。ふう、と私は息を吐いた。集中しているから大丈夫と思っていたけれど、パソコン画面を眺めていたからか心なしか車酔いをしそうだった。
確認のために車を降りたついでにマネージャーを呼んで、念のため持ってきていた速効性のある酔い止め薬を先に飲んでおく。

「Aちゃん、大丈夫？」

私のことをよく見ていたのは星野さんだった。志摩の姿で、さっきまであんなに伊吹と強い口調で言い合っていたけれど、星野さんになるとやっぱり優しい。

「具合悪い？」

わざと声のトーンを落として聞いてくれたのは、周りに気を遣ってくれたからかもしれない。すぐ近くにいた綾野さんだけは、星野さんの様子に気づいて私に心配気な表情を向けた。私は首を横に振る。

「大丈夫です。ちょっと酔いそうだっただけで」
「思ったより揺れるもんね」

昨日はあまり睡眠時間を取れなかったからかな。多忙とはいえ、体調管理が出来ていないのは、役者としてよくない。主演の2人にも心配をかけてしまって、だめだめだ。

「俺たちには気を遣わなくていいし、我慢しなくてもいいから」
「…ありがとうございます」

気遣うように綾野さんの大きな手が私の背中をぽんと叩く。重たくなった気持ちを追い出すような、そんな仕草。

2人の息はオンでもオフでもぴったりで、もうさながらバディのようだった。映像を確認するとそれがよくわかって、思わず声に出して笑ってしまうと、前にいた綾野さんが振り返った。

「面白かった？」
「はい。本番でも我慢してるんですよ。声出したらダメなので」
「つまり、Aちゃんが声出して笑ったらNGね」
「よっし、笑わせるぐらいの芝居する」
「そこは頑張らないでください」

私の気持ちを紛らわせるように楽しい雰囲気を作ってくれているのだと思う。2人には今も昔も助けられっぱなしだ。