step by step (ページ2)

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顔合わせページ2

またおふたりと共演出来る日が来るなんて、夢みたいだ。
私が役者としての第一歩を踏み出すことになった、大事な大事な作品。あの時に貰った言葉は私に勇気をくれた。

どの仕事だって丁寧にこなしてきたし、場数も踏んできた。でも、今日からの作品は私にとっても一味違う。顔合わせと本読みだけだというのにどきどきは止まらない。
ひとつ深呼吸をしてから、部屋のドアを開いた。

「…あっ！」

近くにいる方から順に挨拶していくと、今回主演のふたりと目が合った。先に声をあげてくれたのは綾野さんの方だ。

「綾野さん、星野さん…！よろしくお願いします！」
「Aちゃん！久しぶりだね」
「会ってないうちに立派な女優さんになっちゃって」
「俺も全然会ってないや。コウノドリぶりだから……5年ぶり？」

人懐っこい笑顔を返してくれる綾野さんに、嬉しそうに目を細めてくれる星野さん。
その反応に思わず私は目を丸くした。

「…っ、覚えてくださってたんですか…？」
「忘れるわけないよ、初めてって言いながらあんだけいい演技しといて」
「そうそう」

コウノドリで共演させてもらったのは話数でいうと1話のみ。撮影期間も短く限られていて、それ以降おふたりと共演することはなかったから、忘れられていてもおかしくないと思っていた。

「改めてよろしくね？」
「また共演出来て嬉しいよ」
「こちらこそ、すごく嬉しいです…！」

優しい言葉が本当に嬉しい。
名前が用意されている席に座るように指示があって、この話はそこで切り上げるしかなかったけれど、時間ならこれからたくさんある。
順に役名と名前と意気込みを話していく共演者のみなさんに時折拍手を送りながら、私は思い出していた。

初めての現場、初めてのカメラ、初めての演技。緊張から隅で小さくなって、覚えたセリフをひとりでぶつぶつ言っていた私にかけてくれた言葉を抱きしめる。

「…では次、Aさんお願いします」
「はい！」

『失敗したっていいんだよ』
『今を楽しんで！』

この現場を、私は精一杯楽しむ。

「青葉紬役のAAです。素敵なカンパニーの一員になれてとっても嬉しいです。精一杯頑張って楽しみたいと思いますので、最後までよろしくお願いします！」