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「あたしもっと普通になりたいよ。普通の女の子みたいに友達作って遊びたい。自由に外に出たい」
「…前にも言っただろう。お前は」
「極道の娘だから?だから何、あたしは別にアンタみたいに喧嘩したいワケじゃないのにこんなこと続けても意味なんてない」
啖呵を切った少女を一瞥し、龍心は顎を一撫ですると部屋の隅へと歩み出す。
辺りを見渡す様は何かを物色しているように見えて、少女が首を傾いだその時、彼は徐に針山に活けられた花を引っこ抜くとブチリと手折った。
とりわけ花が好きでも無ければ可哀想とも思わない少女だが、目の前で突然起こった蛮行に目を眇める。
ブチ、ブツっ。バラバラにされた花弁が散り、雑に千切られた茎を少女の足元に放った。
龍心の真意がわからず、少女は佇むしかない。
「極道の喧嘩っつーのは単純でよぅ。やられたら、やり返す。それにテメー自身が関与してなくてもそいつの身内っつーだけでタマ取られるンだよ。力のねェモンは抵抗する術もねェ上に、選ぶことも、自由であることも許されない」
龍心は足元を指す。
「これはお前だ。力のない半端モンが自由を求めて外に出た所でこの花みたくボロボロにされて捨てられるのがオチだ」
辺りに散らばる花弁が、茎がまるで自分の身体に見えて少女は思わず息を呑む。
「この世界で好きに生きたければ強くなれ。自由だのなんだの語るのは強くなってからにしやがれ」
「……」
少女は何も言い返すことが出来なかった。
数々の修羅場を潜りこの組織をここまで伸し上がらせて来た男の言葉には重みと説得力があり、納得せざるを得ない。
「わかったらさっさとここを片付けて稽古に戻れハナッタレが」
「うるさい。女にハナタレ言うな、あと垂れてないし」
「テメーみたいな弱っちぃチビはハナタレで十分だ」
「…ってこの花はアンタがやったんじゃん!!これは自分で片付けてよ!!」
「馬鹿野郎ォ先に部屋汚したのはテメーだろうが。たっかい値打ちモンぶっ壊しやがってこの野郎、全部終わるまで部屋から出さねェぞ」
「死ねクソジジイ」
「親に向かって死ねだァ?殺すぞクソガキ」
「やってみろもーろくジジイ」
ドスを利かせた声で脅しても、少女は眉を吊り上げて果敢に言い返してくる。誰に似てしまったのか物凄く口が悪い。
決して上品とは言えない罵声が飛び交うなか、「総裁」と誰かが龍心を呼び止めたお蔭で無意味な応酬は漸く終わりを迎えた。

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花恋(プロフ) - 更新再開を心よりお待ちしてます (2021年1月30日 3時) (レス) id: e938aee02d (このIDを非表示/違反報告)
ハチ公(プロフ) - 花恋さん» コメントありがとうございます。不定期更新ですがまた読んでやってください(^^) (2020年7月29日 21時) (レス) id: 5dc992d6af (このIDを非表示/違反報告)
花恋(プロフ) - とても面白いです!これからどんな展開になるのか今からドキドキです^ - ^ (2020年7月22日 22時) (レス) id: 2b0127518b (このIDを非表示/違反報告)
ハチ公(プロフ) - りさん» コメントありがとうございます。嬉しいです(^^) (2020年7月7日 22時) (レス) id: 55961c2479 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - すごく面白いです、更新楽しみにしています!(^^) (2020年7月7日 5時) (レス) id: 0ffa97bc4b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハチ公 | 作成日時:2020年7月1日 9時

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