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「じゃああたしそろそろ行くね。バイトあるから」
「おう。おにぎりサンキューな、美味かった」
「また寄ることがあれば差し入れ持って来るね」
「おー。次は衣がでっけェアメリカンドックな」
「ほんっと好きだねそれ。考えとく」
軽口を何度か交わし、クロが教室から出ていくのを手を振って見送ると村山は食べ掛けのおにぎりを一気に頬張る。
冷めてもこの変わらない美味しさ。もう何でも屋なんか止めて定食屋開くかレストランの厨房で働いた方が稼げるのではと思う。
三つ目に手に伸ばすと、古屋と関がそれぞれ片手におにぎりを持ってやってきた。関ちゃーん、それ何個目よ?
「クロは?」
「帰ったぜーついさっき。バイトあるってよ」
「そうか…礼、言いそびれちまったな」
「その内また顔出すんじゃね?その時言えば」
「まあ差し入れの事もあるが、うちの頭が世話になった礼も、な」
「は?それどういう意味」
いつ自分がクロに世話をされたか覚えのない彼は古屋の言葉に顔を顰める。返事次第では拳を奮う事になるだろう。
「ちょっとは踏ん切り付いたかよ。山王との喧嘩から大分参ってたろ」
「……あ゛――何?おれそんなに顔出てる?」
投げ掛けた質問に言葉ではなく、ニヤリと悪どく笑って答える古屋に村山は唸声を上げながらソファーの背もたれにだらんと身を預けた。
「頼むぜ頭」
「…頭、ね」
声に出して復唱し、三個目のおにぎりを平らげた。そして改めて考えてみる。自分にとって鬼邪高の頭とは。
四つ目のおにぎりに手を伸ばそうとしたところで、ふと村山は気が付いた。クロが村山用に置いて行ったタッパーからおにぎりの姿が消えていることに。
心当たりのある犯人へと視線を向ければむしゃむしゃとおにぎりに齧り付く関が頬に米粒を付けながら満面の笑みを浮かべていた。
「村山さん、腹いっぱいなら言ってくださいよ!俺、まだまだ食えるんで」
村山から駄々洩れるドス黒い殺気に古屋は逸早く察知し、彼らから距離を取った。
「ざっけんな関てめェ一人で食い過ぎだバカ野郎!!!!」
その日の定時制の教室は酷く荒れたという。

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花恋(プロフ) - 更新再開を心よりお待ちしてます (2021年1月30日 3時) (レス) id: e938aee02d (このIDを非表示/違反報告)
ハチ公(プロフ) - 花恋さん» コメントありがとうございます。不定期更新ですがまた読んでやってください(^^) (2020年7月29日 21時) (レス) id: 5dc992d6af (このIDを非表示/違反報告)
花恋(プロフ) - とても面白いです!これからどんな展開になるのか今からドキドキです^ - ^ (2020年7月22日 22時) (レス) id: 2b0127518b (このIDを非表示/違反報告)
ハチ公(プロフ) - りさん» コメントありがとうございます。嬉しいです(^^) (2020年7月7日 22時) (レス) id: 55961c2479 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - すごく面白いです、更新楽しみにしています!(^^) (2020年7月7日 5時) (レス) id: 0ffa97bc4b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハチ公 | 作成日時:2020年7月1日 9時

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