243.注文 ページ43
*
「これも玲於くんのお友達の曲なの？」
「そうだよ」
「すごいね。やっぱり芸能人だ」なんて
運転しながら話すA。
身内に芸能人いるんだし
珍しくもなんともないはずなんだけどな、この人。
一応楽しんでくれてるみたいで嬉しい。
途中SAで人目を気にしながら休憩して
東京から離れたし人も少ないから
助手席座らせてってお願いしたら渋々了承してくれて
晴れて助手席に座れることになった。
「後ろより見えやすいから気を付けてね？後ろはスモーク貼ってるからまだマシだけど」
「案外誰も見てないって」
「見る人が見ればわかるよ。玲於くんおしゃれさんだし、オーラが違う」
「そんなこと言ったって俺にだってプライベートはある」
「うん。それはそうだ」
サングラス越しにAの笑った横顔を眺めながら
なんなら少しくらい
マスコミも噂にしてくれていいのに、なんて思う。
Aは嫌がるだろうし
言ったところで本気にされないからなー……
それにしても念願の助手席、いいな。
彼女の横顔を独り占めできる。
「……あんまり見ないでよ」
「バレた？」
「だって顔ずっとこっち向いてる」
「いいじゃん、やっと座れたんだし。安全運転でお願いしますよ？」
「分かってます！」
まぁ何かあっても困るしちゃんと見てるだけですけどね。
Aから「玲於くんたちの曲かけて」とリクエスト。
更に「歌ってよ」なんて追加注文。
「やだ。そんな安売りしてないから、俺」
「ふふ、そこは『パフォーマーだから』とかじゃないんだね」
「最近パフォーマーでも歌うことあるから」
「知ってます。ほら、わたししか聞いてないよ」
結局歌ったし、Aが1番歌ってた。
高速を降りてからまた休憩しに公園に寄る。
Aがトイレに行ったので車内で待ってたのに
全然戻って来なくて、何してんだよなんて
Aが行った方向を確認すると
誰かと話してる姿が目に入ってくる。
知り合いなんだろうか。
俺がそれに気付いて少ししてからAは戻ってきた。
「ごめん、遅くなっちゃった」
「誰？知り合い？」
「あー、うん。チアやってた時応援してくださってたファンの方で。気付かれると思ってなかったし、こんなとこで会うなんてびっくりした」
ファンに気付かれるのが俺じゃなくてAだなんて
思わず笑ってしまう。
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作者名：はな* | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ge_hana_/
作成日時：2021年1月17日 1時
