彼女からキスを盗む方法 Ⅴ【Reo】 (ページ42)

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242.長居ページ42

*

《もう家？》

〈さっき帰ってきた〉

《行ってもいい？》

〈いいよ〉

そんなメッセージが来て待ってると
少ししてAがやってくる。

「お邪魔しまーす」

「なんか久しぶりだよね？うち来るの」

「確かに。あ、あけましておめでとうございます」

「あけましておめでとうございます」

Aには言ってなかったこと、忘れてた。

「明日8時過ぎには出たいから、その前にうち来てほしい」

「分かった」

「じゃあよろしくね」

「え、待って帰んの？」

「うん」

「せっかく来たんだしゆっくりしてけばいいのに」

まだ来てから10分も経ってない。
明日のこと伝えるためだけに来たの？

「だってこれから準備したり……早く寝たいでしょ？」

「だからってまだここ来て10分も経ってねぇよ？」

Aの言うように準備は多少しないといけないし
ちゃんと寝られてないから寝たい。
だからってすぐ帰られるのも寂しい。

「じゃあ、お言葉に甘えてあと10分だけ」

「なら立ってないでこっち来な」

「んー……」

Aは迷うような素振りをする。
その反応は地味に傷付くよ……？

「来ないの？」

「隣行ったら長居しちゃいそうで……帰れなくなりそう」

「それはそうかも……ね、ほら来て」

迷ってた理由それかよ(笑)
その考え、あながち間違ってないとは思うけど。
手を掴むと困った表情で結局隣に座る。
1週間、長かったってわけでもないのに
Aに触れるのが随分懐かしく感じる。

少し俺の様子を伺う感じのAと目が合って
肩を抱き寄せ、キスをする。

……安心する。離したくない。

俺からしたキスなのに
段々と彼女のペースに持っていかれる。
というのもAも離してくれないからだ。

結局『10分だけ』なんて無理で1時間はいた。

.

「おはよ」

「おはよう」

「寝れた？」

「ばっちり」

今日から2泊3日でAのお父さんの別荘にお邪魔する。
車のキーを受け取って、先に荷物を詰めた。

「やっぱ助手席じゃダメかな」

「こわいからやめとこ？」

時間差でやってきたAに交渉してみるけど
諦めて言う通りにしとく。
隣座りたかった。

「じゃあ出発しまーす」

「はーい」

車内では俺がセレクトした曲を流す。
「寝ててもいいよ」とは言われたけど
運転してもらってるのにそれは申し訳ない。
初めてのふたりでの旅行になるんだし。

*