彼女からキスを盗む方法 Ⅴ【Reo】 (ページ3)

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203.決断ページ3

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「なんも言わないなら続けていいって捉えるけど」

「……足りない。わたしも足りない……」

Aから小さく聞こえたその言葉を合図に
一晩中肌を寄せあった。

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「玲於くん！起きて！朝！」

「ん……うるさ……起きてる」

「目開いてない！布団を抱かない！」

「わかったって……」

心配することないくらい元気なようで
俺が仕事に間に合うように
朝から叩き起こされる。

「今日は会社行くの？」

「行くよー。……あ、大丈夫だから。何かあったらお兄ちゃんに連絡するし」

「あってからじゃ遅いからな？」

「分かってる。やり返すつもりはないけど、わたしも馬鹿じゃない」

昨日の朝の寂しくて不安そうだったAは
今日はいなかった。
今のところ嘘付いてるとか
強がってるようには感じられない。
智哉さんと話して何か変わったのかも。

「そういや亜嵐くんがご飯連れてってくれるって」

「よかったね。いってらっしゃい」

「いやいや、あなたも行くんですよ？あなたのために連れてってくれるんですからアランが」

「ほんと？」

「ホント。何食べたいか考えといて」

「えー、何がいいかなぁ」

退院したらおいしいもの食べたいって言ってたし
もうこの際亜嵐くんに奢ってもらお。

「じゃあね」

「行ってらっしゃい。お仕事がんばって」

「ん。Aもがんばって」

本人は気付いてんのか分かんないけど
首筋に昨日付けた痕がくっきりと見える。

「……なに？」

「いや、なにも。それより早くして」

マスクを下げて待ってると気付いて口づけてくれた。
笑顔で手を振る彼女に見送られて出るの
やっぱりめちゃくちゃいいな……

*

「わたし、今の会社辞めることにした」

Aからそう聞いたのは
それから1週間後のことだった。

「そっか。智哉さんと相談して？」

「うん。来月末で退職する。上司にはすごい引き止められたけどね。まあ今回のこと上司は知らないし」

智哉さんの説得に応じたってことなんだろう。
退院して復帰してから今のところは
直接嫌がらせを受けることなくなったみたいだけど。

「次、何かすんの？」

「あー、まだ決めてない。働きたいとは思ってるよ」

「歌って踊れる女優さんになるのは？」

「よく覚えてたね(笑)この歳から挑戦するの、厳しいよ。それは分かる」

*