彼女からキスを盗む方法 Ⅴ【Reo】 (ページ12)

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212.目印ページ12

*

朝方、目が覚めるとまずAの寝顔が目に入って
キスから始まった昨夜のコトを思い出す。

「ん……」

俺が動いたことで目を覚ましたのか
寝ぼけ眼でこちらを見てゆっくり微笑み、
胸のところに甘えるように擦り寄ってきた。
寝起きの体温が心地良い。

「れおくん……」

「ん？」

「んー……」

「ねみい？」

「うん」

「おれも」

「おしごとは？」

「まだへーき」

じゃあ、と抱きついて頭をぐりぐりと
俺の胸に押し当ててくる。まるで小動物。

まだ眠くて寝ぼけながらも
絵に描いたような幸せな朝。
できることならずっとこうしてたい。

随分眠そうだし休みなら寝てたらいいのに、
「おきる」と着替えて帰る準備をしだす。
そうだ、ひとりでこの部屋にいるの寂しいんだっけ？

「今日は夜いんの？」

「遅いかも。休みだけど送別会なの。有難いことにわたしのためにしてくれるんだって」

お酒には強いこの人に飲みすぎんなよ、とも言えず
ただ色々と無事で帰ってきてくれればいいんだけど。

「……変な心配してない？」

「してない」

「まぁね、この前同僚にデート誘われたし」

もう俺が嫉妬してたのバレてるし
不安になりそうなこと言ってきて完全にからかわれてる。

「断ったんでしょ？もう分かったっつーの」

「えー、つまんない」

「朝から遊ぶなって(笑)」

Aが他のヤツの事どうでもいいのを分かってても
そういう話頻繁に聞くのはいい気分じゃないんだよなー……

「ちょっとこっちきて」

「なに？」

「上脱いで」

「え？なんで」

「いいから」

Tシャツを脱がせ、現れた胸に唇を寄せて
できたばかりのシルシを指でなぞった。

「もー……」

「なんで効果ねえんだろ」

「なんでだろうね(笑)」

「笑ってないで考えろよ」

「うーん……わたしがかわいすぎるから？」

「調子乗んな」

デコピン一発おみまいしてやると
「いてて」ってわざとらしくおでこに手をあてて笑う。

「思ってるわけないじゃんそんなのー」

「……まぁそうかもしんないけど」

「ん？なに？」

「まぁすげー子どもっぽいもんな、って」

「えーひどい！」

最近外でもこんな感じなのかな、こいつ。
そういうかわいい顔すんのは俺の前だけでいいのに。

*