191.回顧 ページ41
*
ベッド横にある椅子に腰掛けると
Aは俺の顔をじっと見ながらゆっくり口を開いた。
「佐野さん……は、わたしの彼氏、でしたよね？」
「ん、そう」
「この前、兄……から聞きました。色々と記憶が抜け落ちてるみたいで……ごめんなさい」
「まぁ……それは仕方ないことじゃん。身体は？大丈夫？」
「ちょっと痛いとこありますけど、平気です。そもそもなんでここにいるのか分からなくて……階段から落ちたって聞いてるんですけど」
それも分かんないんだ……
一番不安で怖い思いをしてるのは間違いなくAだった。
「お兄さんから連絡もらって1回お見舞い来たんだけど、その時まだ意識ない状態だったから……今日話せてよかった」
「来てくださってたんですね。ありがとう、ございます……」
「……どした？」
「いや、なにも……あ、あの、わたし、佐野さんのことなんて呼んでました？」
俺の顔を見ながら話してたのになぜか急に目を逸らして
ちょっと恥ずかしそうにする。
教えてくれなかったけど
何か思い出したりしたんだろうか。
「玲於くん、って呼んでた」
「れおくん……」
「……なに？」
「ふふっ、れおくん」
今どう思ってるか分からないけど
笑って俺の名前を呼ぶAに懐かしさがある。
「覚えてることはあんでしょ？」
「家族構成とか彼氏がいたとかはなんとなく分かるんですけど、特にそれがどんな人だったか思い出せなくて。とにかく、過去のことが曖昧なんです」
「……無理、しなくていいから。周りに気を遣う必要ないし」
「……ありがとうございます。優しいんですね、玲於くん」
そう言った後3秒くらいして
「あ……ごめんなさい。彼氏、なのに」と謝られる。
「なんか……変、ですよね……すいません」
「そーいうとこだって。気にしなくていいから」
こんな状況だし元気って感じはないけど
初めて会った時と同じような距離感で正直寂しい。
「スマホとかは見てないの？」
「ちょっとずつ見てます。でも人との写真とかあんまりなくて、メッセージ見てても頭痛くなってきちゃって」
「そっか……他に誰か来た？」
「目が覚めた時、駆けつけて来てくれた兄と、両親だけです。記憶がないせいでだいぶがっかりさせてしまったんですけど……あ、今もですよね……」
「いや……記憶がないことは聞いてたけど、前と変わってないと思うし……」
やっぱりAはAで、そこは全然変わってない。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 538人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はな*(プロフ) - Miiiiさん» お話読んでいただいてありがとうございます！今後もそういったネタ挟んでいけたらな…と思っております。引き続きお付き合いいただけると嬉しいです！ (2020年11月16日 0時) (
レス) id: 27dc132a0b (このIDを非表示/違反報告)
Miiii(プロフ) - 一気に読みました！面白かったです！キスの予約の所ニヤケ転げました。他にも語りたいけどネタバレになるので黙ります。 (2020年11月14日 12時) (レス) id: 35755ecf0a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はな* | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ge_hana_/
作成日時：2020年11月12日 18時
