190.喪失 ページ40
*
「……どんな感じなんですか」
『自分のことはわかってるみたいだけど、周りの人のことをほとんど覚えてないっぽい。俺のことも、父さん、母さんのことも覚えてなかった』
智哉さんのことが分からないなら
きっと俺のことも分からないんだろう。
『先生には、記憶障害とかは一時的なものが多いから検査して様子見てみるしかないって言われた。急に思い出すこともあるみたいだし』
「……そうっすか……」
『……かなり堪えたわ……Aにとっては知らない人になってんだから……家族なのに』
正直言ってAの目が覚めたことすら実感がなくて
会って話したいけど、智哉さんの話を聞く限り
それすらも怖く思える。
『……それで……佐野くんのことも今の時点では分からないみたい。でも、会ったら思い出してくれるかもしれない』
「……そうだといいんですけど」
思い出してくれたらもちろん嬉しい。
ただ、そう言いながらも
思い出すならまずは家族だろ、って思うし
先に俺を思い出されてもなんか申し訳ない。
『もうしばらく入院になるから、忙しいと思うけど……もしよかったら会いに行ってやってほしい』
「行きますよ、そりゃ」
『ありがとう……』
「智哉さん、時間あったらメシ行きましょ」
『……うん』
ひとりで抱えるのはつらいと思った。
智哉さんも、俺も。
きっとAに会ったら俺だって
今の智哉さんみたいにやるせない気持ちになるんだろう。
誰が悪いわけでもないんだから。
.
Aの記憶がないと知らされてから2日後
たまたま取材が別日にずれ、
2時間ほど空きができたので
無理を言って病院に連れてきてもらった。
不安になりながらも病室の扉を開けると
窓の方を見ていたAがこちらに気付く。
「あ……こんにちは」
「こんにちは」
ただただ生きていてくれてることが嬉しくて
涙腺が緩みそうになる。
「あの……失礼ですが……」
「あぁ、ごめん」
変装を解いてもやっぱり
分かってもらえてないみたいだ。
「佐野です」
「佐野さん……」
「わかる？」
「ごめんなさい……」
「そっか」
「ほんと、ごめんなさい……」
早速悲しそうな表情をさせてしまって申し訳ない。
智哉さんから事前に聞いてたからか
会うまであんなに怖かったのに
自然とこの状況を受け入れられてる自分がいた。
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はな*(プロフ) - Miiiiさん» お話読んでいただいてありがとうございます！今後もそういったネタ挟んでいけたらな…と思っております。引き続きお付き合いいただけると嬉しいです！ (2020年11月16日 0時) (
レス) id: 27dc132a0b (このIDを非表示/違反報告)
Miiii(プロフ) - 一気に読みました！面白かったです！キスの予約の所ニヤケ転げました。他にも語りたいけどネタバレになるので黙ります。 (2020年11月14日 12時) (レス) id: 35755ecf0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はな* | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ge_hana_/
作成日時：2020年11月12日 18時
