172.距離 ページ22
*
そんなことを思ったのは
引っ越した日以来、
一緒にお風呂に入ってくれないのと
キスより先は一切してくれなくなったからだ。
もちろんAも忙しそうにしていて
時間が合わないことは多かった。
それにしてもうまいこと避けられてる気がする。
夜行けば同じベッドで寝てはくれるけど
ただ隣で寝るだけ。
タイミングが合えば
ご飯も作ってくれるし電話も含め話はする。
でもいつも俺に見せる
子どもっぽい甘えてくるようなAはいなくて
どこか寂しく感じてた。
「ライブがんばってね」
「ん、がんばるわ。お土産いる？」
「いい。来月わたしも出張で行くし」
「Aもついてきてくれればなー」
「……来月ちゃんと観に行くから。楽しみにしてる」
喧嘩してるって感じではないけど
明らかに今までと違う。
ただそのことで特別不自由しているわけでもないので
解決もしないままツアーが始まった。
元々会えなくて寂しくても
彼女は普段、表に出してこない。
ひとりで泣いてんじゃないかとか心配で
電話かけて聞いてやるけど「大丈夫」の一点張り。
逆に俺が心配しすぎなのをなだめられ
「忙しいのに電話ありがとう」で終わる。
彼女の言うことを否定するわけにもいかず
とりあえず初日終わって帰るまでは考えないことにした。
.
「おかえり。お疲れさま」
「ただいま」
連絡したらうちで笑顔で出迎えてくれて
やっぱり心配しすぎだったかも。
「お風呂沸かしたよ」
「入る？」
「先どうぞ」
「入んねぇの？」
「あー……今日は……ごめん」
「あー……」
お腹の下の方をさするジェスチャーで色々と察する。
「残念」
「ごめんね」
「そればかりは仕方ない」
「えっ……玲於くんどうした？」
「……充電」
「……お疲れさま」
おもむろに近付いて抱き寄せると
珍しいと思われたのか「えっ……」と言われる。
でもすぐに背中に腕を回してくれた。
この匂い……安心する。
「寂しくなかった？」
「大丈夫だって。ほんの数日だよ？もっと会えないときあったでしょ？」
「まぁ……確かに」
ちょっとだけ心に距離がある感じがするのは
気のせいじゃないはず。
「仕事、忙しいの？」
「玲於くんほどじゃないよ。ほら、お風呂入らないの？」
「……行ってくるわ」
*
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はな*(プロフ) - Miiiiさん» お話読んでいただいてありがとうございます！今後もそういったネタ挟んでいけたらな…と思っております。引き続きお付き合いいただけると嬉しいです！ (2020年11月16日 0時) (
レス) id: 27dc132a0b (このIDを非表示/違反報告)
Miiii(プロフ) - 一気に読みました！面白かったです！キスの予約の所ニヤケ転げました。他にも語りたいけどネタバレになるので黙ります。 (2020年11月14日 12時) (レス) id: 35755ecf0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はな* | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ge_hana_/
作成日時：2020年11月12日 18時
