彼女からキスを盗む方法 Ⅲ【Reo】 (ページ6)

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106.忌避ページ6

*

「……もう寝よっか」

番組はまだ終わっていなかったが、
Aはテレビを消した。

「先行ってるね」

避けるように寝室へ行ってしまって
リビングにひとり取り残される。

追って寝室に行くと、Aは寝てはいなかったが
間接照明をつけて布団に入っていた。

「A」

「玲於くん、ごめん」

「なにが？」

「ううん、なんでも……おやすみ」

さっきの話題を避けたことに対しての
「ごめん」なんだろう。
何か不安がってるのを無理に隠してる時の表情だ。
前のを見てるからもう分かる。

でももう今日は掘り返してはいけない気がして

「こっち向いて」

「ん？」

「……おやすみ」

軽く口づけてから寝た。
キスの後、少し表情が和らいだ気がした。

朝は相変わらず忙しい。
というかAが忙しそう。

「あー、昨日言い忘れてた。来週出張入っちゃって3日間いないの。後でちゃんと詳しいこと連絡するね」

「来週なら俺も確か泊まりの仕事あるから多分来れないし」

「じゃあ問題ないか」

朝ごはんを食べながらそんな話をする。
また忙しそうだと体調崩したりしないか心配。

「出張どこ行くの？」

「福岡。美味しいものたくさん食べるんだー」

「いいじゃん、楽しんできな」

「遊びじゃないんだけどね(笑)まあ夜は付き合いもあるけどいいとこで食べれるし」

「写真送って」

「うん。飯テロしてあげる。よし、ごちそうさまでした」

Aは先に出るので食器を片付けながら
こちらを見ずに話を続ける。

「……そういえば玲於くんって……」

「なに？」

「やっぱなんでもない」

「そこまで言ったなら言えよ」

「……お父さんに会ってくれるくらいだから、遊んだりしてないのかなと思って」

「……どういう意味？」

「その……他の女の人とか……ごめん変な話しちゃった。忘れて」

「浮気ってこと？」

「こんなに大切にしてくれる人、初めてなの」

今までの彼氏と比べてってことだろうけど
元カレどんなやつだったんだよ。
……1コ前のヤツは志希さん知ってるか。

「……じゃあそろそろ出るね」

「ああ、うん」

「いってきます」

「いってらっしゃい」

キスした後ふわり、と笑って出ていくAを見送った。

*